「009 RE:CYBORG」

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神山健治監督の最新作。

映画公開は去年2012年の末頃で、映画観に行ったんだけど、そのときはブログに書くの忘れてた。

で、2013年5月22日にようやくDVDレンタル(発売)開始されたので、改めて借りて観た感想をさくっとまとめとこうと思う。

まぁ、観終わった直後の素直な感想としては、ひとこと。
「難解」ということ。

神山監督の作品は、「攻殻機動隊 S.A.C.」「攻殻機動隊 S.A.C.2」の2シリーズと「攻殻機動隊 Solid State Society」の特別編、アニメ版の「精霊の守り人」、アニメ版&劇場版「東のエデン」と、それぞれ観てきた。

この人の作品のテーマは結構一貫してるように思う。

「人としての強さ」というのは共通してるテーマだと思う。また、「攻殻機動隊」で扱っている「集団的集合無意識」は、今回の「009 RE:CYBORG」でも扱っているテーマの1つ。それを突き詰めたモノが、本作品の「神(彼)」という概念、と言って良いと思う。

私は石ノ森章太郎さんの原作は読んだ事がないけれど、原作にも「神」を扱っているエピソードはあるらしい。ただし、そのエピソードを完結することなく、氏はこの世を去った。おそらく原作では実際に物理的な力を行使できる「神」が出てくるんだと思う。「デビルマン」など昔の作品には「神」を題材にした作品が結構あるが、たいてい圧倒的な力を持った存在として「神」が描かれる。元々絶対的な存在なわけだし。

しかし、この作品は違う。

あくまで「神」は人間の「脳」の中だけに存在する、という作りになっている。
天使として描かれている小さな女の子も、あくまで象徴的な「イメージ」で、「脳」が作り出した「幻」として解釈できる。共通して聞こえる天使の声も、「集団的集合無意識」内から発せられた言葉として説明できる。
現に、連続爆破テロを起こしたのも、ドバイに原爆落としたのも、ジェットが見たと思った現象も、実際に実行したのは人間(サイボーグ)だったわけだし。

ただし、「天使の化石」は物理的に存在する、という世界観ではある。
(これは、原作に出てくる「神」のミイラ化した姿なのかな?辻褄合わせ?原作読んでみないとちょっとわからないな。。)

作品の中でフランソワーズに語らせている「神は克服できない試練を人間には与えない」という言葉。
私は無宗教なので、そんな存在はいない、という立場なんだけど、そう考えたくなる心理はわかる。そう考えることで、困難を克服するモチベーションにすることが出来る。何かしら宗教を信仰してる人は、土壇場で頑張れる要因が1つ多いんだろうなー、とは思う(反面、それは弱さでもあるんだろうけど。。)

もっとも、この作品の中では、「神」は存るとも存ないとも、どちらとも解釈できる作りにはなっているけども。

結局、神山監督が伝えたかったメッセージは、最後宇宙空間でジョーが語った以下の言葉に集約されてる。

たしかに人は愚かな存在だ。
人が寄り集まると、抗いようのない集団無意識によって、いともたやすく堕落する。
けれど、人類一人一人は不完全であるがゆえに、予期しない驚きと新しい発見、そして無限の可能性を秘めている。
だからこそ素晴らしいんだ!!
だがあなたは、そのことに気づき、あなたの問いかけに答え、命がけでこの世界を救おうと抗った者達の想いを踏みにじるのか!
それでもまだ、人類を、世界を、滅ぼすというのか!
答えてもらいたい!神よ!!!

素晴らしい「人間讃歌」。
理不尽に抗い続ける人間達への讃歌。
やはりこれが一番重要なメッセージなのだろう。
これは神山作品に通底しているテーマだと思う。

ただ、最後のシーンが、いまいちよくわからなかった。

それまでの話は「脳」の中だけで起きてる現象として説明できていたのに、死んだと思ってた島村ジョーやジェットが復活してしまっている。島村ジョー(&ジェット)やフランソワーズがそう願ったから、という理由だけでは説明がちょっと苦しい。

それとも、この最後のシーンは誰かの「脳」の中のイメージ(=夢)なんだろうか?
みんな水の上を歩いてたし。それならまだ納得できるけども。。。

であれば、それは何を意味してるんだ??
そして、エンドロールの月の「天使の化石」は?

「天使の化石」=「正義を成すために己を犠牲にした名も無き者達のモニュメント」という言葉を、最後にフランソワーズに語らせている。ひょっとして最後のシーンは、あの後何百年か経った後の世界で、あの月の「天使の化石」こそがジョー自身、だとか?それはちょっと飛躍しすぎかな。。辻褄は一応合うけど。

結局、自分の中で納得できる解釈が出来ていない。

だからこそ「難解」だな、と感じる。

何にせよ、観終わった後に、色んな人と語り合いたい作品ではある。
君はどんな解釈だと思った?って。

アクションシーン含めて、作品としては超一級品なので、まだ見てない人はぜひ借りて(買って)見るべき。そんな作品です。

■「009 RE:CYBORG」公式HP
http://009.ph9.jp/

今のところ「「009 RE:CYBORG」」にコメントは無し

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