書評
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書評

「DOPESICK 」。
アメリカで現在大問題になっている「オピオイド問題」を扱った、ドキュメンタリーと言える取材記録の本。

なお、「アヘン」を英語で「opium(オピウム)」と言うが、オピオイドとは「合成アヘン 」のこと。

日本に住んでいるとほぼ情報を得ることはないが、アメリカで2020年現在いまだ解決する目処が立たず、拡大中の問題である。

一言で言うと、「麻薬問題」。

しかし、罹患者が自ら快楽のために麻薬を選んだというよりも、パデュー・ファーマという製薬会社が意図的に市場を拡大した「オキシコンチン」という鎮痛剤に依存性があり、その依存性が元で「オキシコンチン → ヘロイン → フェンタニル → メタンフェタミン(メス)」とさらに強い依存性を求めて麻薬中毒になっていく。

病院から処方された鎮痛剤であるオキシコンチンが元で、中毒者に落ちていくのである。こんな酷い話はない。

私は日常生活で病院に行くことはないが、仮に病院に行って医者に「この薬を使って」と処方されれば普通に使ってしまうだろう。
これが依存性のある麻薬だったら、防ぎようがない。

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令和元年のGWは、ひたすら小室直樹さんの本を読みまくっている。

特に令和とは関係ないのだが、前から読もうと思って積読してたところ、天気も悪く外に出る気もしなかったので、ちょうど良い機会だった。GW中の5月3日は憲法記念日だし、憲法学ぶのにちょうど良いかも。

資本主義や経済学、数学などの原論も本当にタメになったが、この憲法言論も実に面白い。

今まで「憲法」を真正面から扱った本はちゃんと読んだことがなかった。
しかし、現在の民主主義や資本主義(経済)を理解する上で、この憲法を避けて通るわけにはいかない。そのことが、本を読んでスッと腑に落ちた。

小室先生の凄さは、数学・経済学・法学・社会学・宗教学などの幅広い知見を元に、一般の人にでもわかりやすく説明できるその解説力にあると思う。
専門知に埋没してる専門バカにはできない芸当。さすがとしか言いようがない。

頭の中を整理する上でも、この本で学んだことをブログにまとめておこうと思う。 ⇒ 続きを読む

最近ある経済の本を読んだ。

もともとの出発は、「財政再建派やリフレ派が言ってることがどうにも腑に落ちない。この人たち嘘付いてるのでは?」という疑問から。

それで、何冊か財政再建派やリフレ派の人たちが書いた本を読んでみた。
いくつか本を読んで、ようやくある程度は腑に落ちた。その内容に関しては、こちらのページに書評を書いた。
https://booklog.jp/users/yoneo/archives/1/4492396462#comment

この文章を頭の中でまとめて納得はできたのだけど、自分はそもそも経済学についてよく知らない。それに気づいた。

というか、あえて避けてきたとも言える。
社会の複雑な状況を説明するのに、人間は目的合理的である、なんて理想化した前提の上に立っている経済学なんて何の役に立つんだ?、と。

ただ、食わず嫌いしてても仕方ない。
よく聞いてるpodcastのニュースでも経済学の話はよく出てくるし。知っておいた方が、経済学の何が有益で何が有益でないかもわかる。
そんな気持ちで手にとったのがこの本。

著者は小室直樹さん。
出版が1998年だからもう20年前の本である。

自分は大学で社会学を学び、社会学者の宮台真司さんを尊敬している。その宮台さんのお師匠さんがこの小室直樹さん。
前からこの本は興味があって読もうと思ってた。で、経済について学ぶならこの本だろう、と自然に手が伸びた。

結果、大正解!!!
いやー、本当にわかりやすくて、目から鱗がボロボロと落ちました。

そのエッセンスをあとで忘れないためにも、このブログにまとめておこうと思う。 ⇒ 続きを読む

ユヴァル・ノア・ハラリ氏の新作「ホモ・デウス」。
前作の「サピエンス全史」の続編となる。

英語版は昨年2017年に既に発売されてたけど、日本語訳がようやく2018年9月に発売された。
前作をめちゃ楽しく読ませてもらったので、続編の今作も心待ちしてた。

いやー、読み終わったけど、本当に面白かった!!!
前作も十分衝撃的だったけど、今回もホントにたくさんの刺激をもらった。

そのもらった刺激を忘れないために、ブログにまとめておこうと思う。 ⇒ 続きを読む

つい先日、佐々木俊尚さんの新刊「レイヤー化する世界」を読んだ。

「中世」⇒「近代」と過去を遡ることで、今後のネット&グローバル化が今以上に進む「未来」を予測する内容の本。

その予測される「未来」は、氏の既存の本でも繰り返し描かれている世界観なので、あまり新しい知見は無かった。(ただし、現在につながる「中世」「近代」はすごく面白かった。こんな過去からの時間の流れがあって、今があるんだなーと再認識できた。)

TwitterやFacebookなどが普及し、ネットが世界中に張り巡らされ、様々な人とコミュニケーションを通じてコネクションを結べる世界。そして、グローバル化した多国籍=無国籍(本書では「超国籍」と書いてた)企業は、税金も出来るだけ払わず、自国内で雇用も生み出さず、富を再配分しないまま、自社の利潤のみをむさぼる世界。

個人はよりバラバラに細分化される。
当書の中では、その細分化された個人の属性を「レイヤー化」と名付け、そのレイヤーに光を当てて貫通したプリズムが「個性」になる、と述べている。
その個性を磨くしかない、と。 ⇒ 続きを読む