民主主義が一度もなかった国・日本

社会学者の宮台真司氏と、9月の政権交代の上に発足した鳩山新内閣で外務副大臣の役職に付く、民主党参議院議員の福山哲郎氏との共著本。対談本でもある。

9月に内閣が組閣されて、現在は12月なので既に3ヶ月が経った。
ここで、政権交代の意味と、与党となった民主党が政権を取り官僚と仕事をし始めた所見含めて、今後の政治、日本の方向性を二人が論じている。

福山さんが外務副大臣という役職にあるせいもあり、外交ネタが多い。
また、この12月前に発売を急いだのも、現在開催されているCOP15(京都議定書に続く地球温暖化対策の枠組みを協議する気候変動枠組み条約第15回締約国会議)に間に合わせるためでもあったらしい。

さて、以下は目次。

第1章 日本の政治、何が変わったのか?
第2章 日本の自画像
第3章 民主主義の代償
第4章 日本の内と外
第5章 アジアの中の日本
第6章 閉ざされた政治空間
第7章 日本の未来

この本でも宮台さんは絶好調(笑)

こういった宮台節が嫌いな人もいるみたいだけど、「マル激」を毎週観てる自分としては全く問題なし。すっかり抗体ができてしまった。それに、こういった各国の位置づけやその中での日本の位置を、歴史を踏まえてこれだけわかりやすく語れる人は、宮台さん以外に自分は知らない。

で、本でも紹介されてるこの四象限図が、基礎知識を理解する上でわかりやすい。

こういう図というか、フレームをきっちり提示してくるのが、宮台さんが他の人よりわかりやすくて良いところ。細かい箇所に当てはまらないことはあるかもしれないが、ざっくり大枠で区切ってもらった方が、受ける側は理解しやすい。

参加主義は市民主義、権威主義は国家主義と読み替えられる。

この図をまず前提として理解すれば、後の話はかなりわかりやすくなる。

この前提以降の話は、政権交代のまとめ的な総括話が進む。自民党の凋落ぶりとかね。しかし、私が興味あるのは未来の話。そういう意味では「外交」話は、福山さんが外務副大臣であるだけに、かなり生々しくリアルな話が語られてるように感じた。

重要なのは「外交」には相手がいるということ。
当たり前なのだが、だからこそ、国内の事情が変わったからといって、過去の約束を反故にはできない。国内事情であれば、国民に事情が変わった経緯を説明すれば問題無いが。外交相手にとっては他国の国内事情など知ったこっちゃない。これはビジネスの世界でも通用する論理だ。

それと、外交では「相手国民⇔相手国政府⇔自国政府⇔自国民」というプレイヤーがいる中で、「自国民の機嫌が損なわれている」というカードを相手国に対して切ることで、交渉を有利に進める方法がある、というフレームを知った。これは面白い。仕事でも使えるかな?「自国民」を「自サービスのユーザ」って置き換えれば。。

本の最後は、「新しいゲームの始まり」という項で終わる。
たしかにその通り。政権交代が起こり、国民が「権威主義」から「参加主義」に移行を促す政府を選んだ。おそらく選んだ国民側はその意識も覚悟もまだ無いとは思うが。。

しかし、これは「新しいゲーム」が始まったということ。
このゲームに適応できない人間は、観客として見守るしかない。そして、発言権は無くなる。私はこのゲームに積極的に参加したいと考えている。そっちの方が辛いけど楽しいから。

「民主主義」とは「積極的に政治に参加する姿勢」のことだと私は思う。だからこそ、「民主主義が一度もなかった国・日本」というタイトルはその通りなんだと思う。

いい加減お国に頼ったり責任転嫁するのは辞めて、積極的に自分たちで政治にコミットしよう。そうすれば、仕事や遊びにももっと深くコミットでき、楽しい人生が送れると私は信じている。

そんなことを、この本を読んで改めて考えた。

今のところ「民主主義が一度もなかった国・日本」にコメントは無し

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