イスラム金融入門

門倉貴史さんの著書。

サブプライム問題で下降しているアメリカ経済や、そのあおりを受けて(何故か)一緒に落ちて行く日本経済。ユーロはドルと比較して相対的に価値が高くなったが、何か明るい材料があるか?と言われると、ヨーロッパ経済に元気があるというわけじゃない。

オイルをベースにした好況は既にタイムリミットは見えているが、しかしまだ時間的猶予はある。サブプライム問題の解決策としてアラブマネーが期待されたが、落ち目の先進国に代わり、著しい成長を遂げているのがこの本で扱っているイスラム圏国家。

イスラムの金融を学ぶことは、今後主導権が様々変わっていくであろう世界経済を考えると、知っておくべきだなーと本屋さんで興味を持ち、購入した本。

目次は以下の通り。

プロローグ 金融市場の新たな勢力
第一章 イスラム金融、これだけ知れば大丈夫
第二章 有力グループ、MEDUSAのパワー
第三章 目が離せない、あの国この国
第四章 インフラ投資にイスラムマネーを!
エピローグ 日本経済とイスラム金融

イスラム金融の大きな特徴は、本書で解説されている通り、「利子の無い取引」に尽きるだろう。

イスラム教では「利子」という概念を禁止しているらしい。何もせず儲けられる仕組みだからとのこと。

その考え方が正しいか正しくないかはどうでもよくて、実際教義として禁止しており、イスラム圏国家では、そのイスラム教の教えをベースにした金融取引(「シャリーア」と言うらしい)を行っているという事実の方が重要。

利子が無いのに金融取引できるの?と思うのだが、仕組みを理解すると、なるほど、よく出来てる。。
細かいところは本書を読めばわかると思うので説明は省くが、取引の方法は日本の経済システムの中でも行われていることなので、別に難しくはないかなと思う。

現在成長しているイスラム圏国家が、それぞれ1国ずつ簡単に解説されているが、それよりも面白かったのが、やはりイスラム金融の仕組み。

「シャリーア」はイスラム圏国家で統一されているわけじゃなく、宗派によって微妙に異なるらしい。
また、「シャリーア委員会」という「シャリーア」を守った取引がされているかどうかチェックする機関の設置が義務づけられてて、構成員はイスラム法学者とのこと。

国際的なイスラム法学者は人員が少なくて、メンバーは掛け持ちで複数の委員会に所属しているとのこと。
新しい法学者の教育は急務。
まぁ、どんな社会だろうと、ニーズが高まれば価値が上がるのは当然だよな。。

「スクーク」と呼ばれる金融債や、「タカフル」と呼ばれる保険もあり(生保/損保ともに)、こういった仕組みがあれば、経済活動をする上では問題無いということが理解できる。

BRICsの次に成長を遂げる国として、「VISTA(ベトナム、インドネシア、南アフリカ、トルコ、アルゼンチン)」で表される国々があることを始めて知ったが、イスラム金融だけを見れば「MEDUSA(マレーシア、エジプト、ドバイ、サウジアラビア)」という言葉で表される国々が成長著しいとのこと。

普段あまり金融関係の情報を集めない自分としては、この辺の概念を学べたのも、この本を読んだ成果。

金融の知識は無くても、急成長しているイスラム国家の勢いを感じることは出来ると思う。

そういった新しい風の温度を感じたい人は、読んでみることをお勧めする。

今のところ「イスラム金融入門」にコメントは無し

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