木田元さんの著書。
この方の本は読んだの初めて。
「爆笑問題のニッポンの教養」に出演されていた方で、話が非常に面白く興味を持ったので、その著作を購入して読んでみた。
1回目は概要だけ、2回目に深く読み込み、「反哲学」とは何か?を学ぶことを目的として読んだ。
目次は以下の通り。
まえがき
第一章 哲学は欧米人だけの思考法である
第二章 古代ギリシアで起こったこと
第三章 哲学とキリスト教の深い関係
第四章 近代哲学の展開
第五章 「反哲学」の誕生
第六章 ハイデガーの二十世紀
あとがき
哲学に関する本は今まで何度か読んだことがあったが、はっきり言ってよくわからなかった。
というのも、とにかく哲学者の言葉は難解で、わざと解りづらくしてるんじゃないか?と思えるくらい理解不能な文章が多かったからだ。
その点、この本は非常に分かりやすい。
自分自身年齢を重ねたことで文章を読む力が付いたというのもあるとは思うが、本の構成が、哲学の説明からその歴史を遡り、哲学界の主要人物(ソクラテス、プラトン、アリストテレス、カント、ヘーゲル、デカルト、ニーチェ、ハイデガー)の思想を順に紹介していき、どのようにニーチェが「反哲学」に至ったか、ハイデガーがそれを引き継いだのかを、簡易な文章で説明されていてほんとわかりやすかった。
また、この本では、哲学者達の原文をそのまま載せるようなことはせずに、著者の解釈で解説されていたため、読んでいて途中でつまづくことも無かった。
「哲学」の本に関しては、こういう配慮がほんとに大事だなーと実感。
さて、本の内容だが、タイトルにもある通り「反哲学=プラトニズムの否定」の一言に尽きると思う。
日本の自然信仰と近い伝統的なギリシアの自然観、それを全て否定したプラトン、その上に新しく超自然的なイデア論を作ったプラトン、ギリシアの伝統に少し引き戻す折衷的な思想を展開したアリストテレス。
キリスト教などの一神教がプラトンの思想と親和性があること。
ニーチェ曰く「キリスト教は民衆のためのプラトン主義にほかならない」という言葉は、それをスバリ表現している。
その後、デカルト、カント、ヘーゲルを経て、神的理性の後見を無くした人間理性の完全性を主張して、「超自然的思考様式」が完成したが、ニーチェは「プラトニズム」は「ニヒリズム」だとして否定、新たに「芸術(美)」を価値として定立をしたのが面白い。
そして、ハイデガーがそれを引き継ぎ、そのまま現在へつながる。。
「真理」は人が「安定」するための一種の誤謬(「真理」なんて無い)とするニーチェの主張や、人間主義(ヒューマニズム)は所詮「人間中心主義」だというハイデガーの主張はすごく興味深い。
哲学と西洋人の思考方式、またキリスト教との関係を改めて考える良い機会になった。
著者は79歳。
さすが年の功というか。。分かりやすく表現された文章には、年季というか圧倒的な人生の蓄積を感じる。
「哲学」に興味ある人で、入門的な本を探している人に超オススメできる本である。
著者の木田さんをテレビで見たとき結構なおじいちゃんだったが、こういうじいちゃんには、ぜひぜひ健康に長生きして欲しいもんである(笑)