遠藤功さんの著書。
古本屋さんで安く売ってるのを見つけ、衝動的に購入。
「プレミアム」についての概念と、その戦略が非常に分かりやすく解説されている。
この本を読めば、「プレミアム」の必要性と、何を目指して製品を作ればプレミアム感を生み出せるか、その戦略が理解できる。
この人の本は始めて読んだが、文章が非常にわかりやすい。
氏は、現場力三部作と呼ばれる「現場力を鍛える」「見える化」「ねばちっこい経営」という著書を出されているが、これらの本もいずれ読んでみたい。そう思わせるくらい、この本はわかりやすかった。
目次は以下の通り。
第1章 プレミアムという現象
1.消費構造の変化
2.「縦の拡がり」から選択する
3.市場の「欲望の質」
第2章 プレミアム消費の2つの断面
1.商品単価と商品グレード
2.日常の贅沢 ー 「ちょっとプレミアム」という消費行動
3.非日常の贅沢 ー 「アイデンティティ・プレミアム」という消費行動
第3章 プレミアムとは何か
1.プレミアムの定義
2.プレミアムのメカニズム
3.ポルシェはなぜ復活したのか
4.「フラッグシップ」と象徴
5.プレミアムと価格
第4章 なぜ「日本発のプレミアム」は育たないのか
1.欧米ブランドの席巻
2.プレミアムの市場性
3.「日本発のプレミアム」を阻むもの
第5章 戦略としてのプレミアム
1.プレミアムの戦略論的位置付け
2.プレミアム・パラダイム
3.プレミアムにおける原則
4.日本企業がすべきこと
第6章 「日本発のプレミアム」の挑戦者たち
1.千疋屋総本店
2.大塚製靴
3.セイコーウォッチ
4.ミキモト
5.タケダワイナリー
6.レクサス
7.星のや 軽井沢
自分は現在「マーケティング」を学習中だが、その一巻としてこの本を手に取った。
しかし、読んでみて「プレミアム」を理解すると、マス向けの「マーケティング」とは全く馴染まない概念だとわかる。
日本の消費者がプレミアムなものを求める歴史的な背景や、商品平均単価が低いビールやアイスなどはプレミアム製品が生まれているが、単価が高い自動車や宝飾品などのプレミアム製品を日本企業が作れていない現状、また何故日本でプレミアム製品が育たないのか、などなど。。非常に納得の解説。
氏は「プレミアム」の定義を、「究極のモノづくり」と「究極のストーリーづくり」の融合と説く。
「モノづくり」は当たり前だと思うが、「ストーリーづくり」という概念が新鮮。なるほどねー。。
たしかに世の中で熱狂的なファンを作り出してる製品には、魅力的な「ストーリー」がある。
巷では「プレミアム」という言葉が流行っていると「はじめに(まえがき)」にも書いてあるが、「プレミアム」という言葉を使うのは間違っている場合がほとんどだなーとわかる(あくまで氏の定義に沿えばの話だが。。)。
何故なら、そこには伝説とも呼べるような「ストーリー」が無いからだ。
氏は、質が良いだけの製品は「ラグジュアリー(=ブランド)」と定義している。
たしかに分けて考えないと混乱する。
とは言え、社会的に概念が普及して皆が意識して言葉を使うようにならないと、言葉の混同は無くならないだろうけども。。
しかし、「プレミアム」はIT業界では適用できないと思う。
第2章の3で、「プレミアム」の基本キーワードとして「高価」「希少」「選別」の3つを挙げているのだが、IT業界で生み出す製品「ソフトウェア」はコピー可が前提なので、この中の「希少」性が生じないからだ。。
つまり「プレミアム」は、五感の中でも「触覚」での接点がある、手で触れられる、形あるモノを作る業界に限定される概念だと思う。
製造業の人は、自分の会社でプレミアム製品を作る可能性を模索するためにも、ぜひ読んでみるべき。
もちろん、他の業界の人でも、何かしら読んで得るものはあると思う。
最近読んだ本の中でも、かなりお勧めな一冊である。