published by よねさん

不完全性定理―数学的体系のあゆみ (ちくま学芸文庫)
不完全性定理―数学的体系のあゆみ (ちくま学芸文庫)

最近よく読ませてもらってるこちらのブログからの紹介。
404 Blog Not Found

野崎昭弘さんの著作。
ゲーデルが証明した「不完全性定理」を分かりやすく解説してくれる本。
(とはいえ、自分は数学的素養をあまり持ち合わせていないため、読むのにかなり苦労した)

目次は以下の通り

1章 ギリシャの奇跡
 1.1 「らしい」と「である」  1.2 根拠を問う  1.3 理想化する  1.4 体系化する
第2章 体系とその進化
 2.1 定義の退化  2.2 公理系の精密化  2.3 公理系の進化  2.4 モデルの多様化  2.5 モデルの効用
第3章 集合論の光と陰
第4章 証明の形式化
第5章 超数学の誕生
第6章 ゲーデル登場
 6.1 完全性定理  6.2 不完全性定理  6.3 第2、第3不完全性定理  6.4 おわりに

今回非常に為になったのは、

数学が、「定義」から出発して「公理」を定め、その「公理」を使って「定理」を「証明」する(…「定理」以下、繰り返し)

という一連の流れを理解できたということ。
また、

「数学的体系=(数学的公理系+論理公理系)×推論規則」
「論理体系 =論理公理系×推論規則」
⇒「推論」=定理+ある事実から「結論」を導くこと

というフレームワークを知ることができたこと。

自分は今まで「公理」とは1つだけある普遍的なものかと思っていたが、数学の世界には様々な「公理」があり、『原論』を書いたギリシャ時代のユークリッドが打ち立てた「公理」も、あくまでその1つでしか無い、という事実はかなり衝撃だった
(学生時代、真面目に授業聞いてたら教わったかもしれんけど。。)

ユークリッドの『原論』によると「定義」として、

  • 点とは大きさのない位置のことである
  • 線とは幅のない長さのことである

など、点や線や面、平面を規定している。
しかし、意味を考えると、これは明らかに現実世界ではありえない代物である。

つまり「理想」だ。
ユークリッド空間(幾何学)は、「理想」を「仮定」として認めることから出発している。
そして、その「定義」を使って「公理」を導き出し「定理」を「証明」している。
(厳密に言えば、この「定義」は直感的なモノなので必要無いみたいだが。。)

出発点が「理想」だと、今まで数学に対して抱いてた堅いイメージが変わる気がするが、前提(定義)を示して1つ1つ証明していくその論理的手法はすばらしい。

この「論理的手法」を確立したことが、ユークリッドの輝かしい功績だ。

3章では、カントルが唱えた「集合論」が既存数学にどんな影響を与えたか、その光(メリット)と陰(デメリット)を学べる。
個人的には、「集合」って概念は、大事だと思うし使いやすい。
自己言及によりパラドックスに陥らなければ。。

4章では、現実世界を、意味を持った具体的(実質的)世界、そして意味を捨てた抽象的(形式的)世界として整理することで、徹底的に「証明の形式化」を行う方法を解説している。

5章は、ヒルベルトが提唱した、数学の正しさを数学的に証明する「超数学(メタ数学)」の解説。
コンピュータで「XHTML」というMarkup言語を規定する「XML」というメタ言語があるが、メタ言語とは言語を規定するための言語と学んだ。
「メタ」とは「上位階層の」って意味らしい。納得。
(ちなみに、DBへInputするデータを「メタデータ」って呼んでたけど、これは間違い??)

そして6章で、ゲーデルが「不完全性定理」により、「一般の自然数論では、論理体系Zは無矛盾ではあるが、正しいことを「証明」が出来ない」ということが証明した、ことを解説。

「一般的な自然数は、その存在は正しくても、その正しさを公理から証明できない」というわけだ。
(その上位概念である「実数」はなおいわんや。。)

人間の知性の限界が証明されたわけで、これは当時数学界に相当大きな衝撃を与えたのは想像に難くない。

しかし、この本がすばらしいのは、最後に野崎氏がまとめた、以下「不完全性定理」に関する感想。

■まず「結果のスケールが大きい」と思う。
■また「目標の設定を称賛すべきである」と私は思う。
■さらに「方法が独創的である」ことも忘れてはならない。
■「このような結果が、人間の知性によって、厳密に証明された」ことのすばらしさも、強調しておきたい。
■さいごに、ゲーデルの不完全性定理が「理論の終わり」ではなく、「新しい理論の始まり」になったこともつけくわえておきたい。

小飼氏のブログにもあるが、僕もこの部分が本の肝だと思う。
終わりじゃなくて始まり。 

最後にこんな感動的な言葉で絞める。

「知る」というのが(中略)「理解する」ということであって、「納得するまで根拠を問う」知性にもとづいていることに、私は感動を覚える。

似非宗教家が安易に世界を語り、人間の限界を語るのとは、厚みが全く違う。

数学の限界を知るとともに、知性を追求する人間の素晴らしさも知ることが出来る素晴らしい本。
ぜひ一読することをオススメする。
(ちゃんと理解できなかったので、機会あるときに再読しよ)

不完全性定理」に1件のコメント

コメントを残す