前々回のブログでフランス人のように1ヶ月間休みたいなーと書いたが、雑誌で関連した評論を読んだのでちょっとそのネタについて書いてみよーと思う。
今年の3月末にフランスで大規模なゼネストが起きた。
フランスには、CDI(無期限雇用契約)というものがあり、要するに日本の終身雇用を契約にしたもの。
フランスは伝統的に労働組合の力が強く、一度取得した労働者の権利は簡単には変えらない。
企業側としては、この契約のため(社会保険料の負担など他にも理由あるけど…)若者の採用に慎重になり、若者が就職できない状況が何年も続いている(フランスの25歳以下の失業率は22.8%)。
この状況を打破するために、26歳未満の労働者を雇用する際に2年間の試用期間を設け、期間内であれば理由なしで解雇できるという「CPE(初期雇用計画)」を盛り込んだ「機会均等法」が3月9日に成立し、それに反対して学生&労働者のゼネストが起きた。
日本でも報道され一時話題になった。この機会に過去の記事を調べてみたが、日本での論調は「今どきデモって過激だなー」とか「フランスの若者って我儘なんじゃない?」「今はフランス危険だから行かない方がいいね」みたいな視点でしか語られてない。
しかも、昨年11月にフランス内相だかが「社会のクズ」発言して暴動になった移民問題と同じと思われてるフシもある。
当たり前だけど、「ゼネスト(ゼネラルストライキ)」と「暴動」は全く違う。
ゼネストは社会的な、労働者によるストライキ(労働争議)、日本で言えば春闘(最近はあんまり聞かないよな。。)。
暴動は、要するにただ不満のため暴れるだけだ。
よく欧米でストが起こると、「他人に迷惑がかかるから止めてほしいよね~」的な話が日本で聞かれるけど、そんな底の浅い話じゃない。他人に迷惑かかろうとも、必要があれば実行するのは当たり前。「他人に迷惑かけなければ何やっても良い」という価値観だけでは説明できない。迷惑かかろうーがかかるまいが、必要であれば「覚悟」を持ってやる気概があるのか?
それにストについても、昔から言われる「資本家 VS 労働者」的な関係から「社長&会社役員憎し!!」なんて言う気も無いし、じゃー共産主義が素晴らしいなんていう気も無い。格差社会も別に悪いとは思わないしね。むしろ差があるのは当たり前だと思う。
そんなストの起こったフランスだけど、26歳未満の若者だけじゃなくて、26歳以上の労働者もストに参加してる。なんでかって言うと、「社会的に連帯して抗議しないと、絶対に労働条件が酷くなる。次は自分達の番」という「合意(コモンセンス)」があるからとのこと。
なるほど納得。つまりフランス社会には、学生から働いてる人まで、そういった「合意形成」がしっかりと成されてる、世代を通して一定の価値観を共有してるってことだ。
このことが、この事件で学べる一番重要な点だと思う。
「合意(コモンセンス)」形成を行うには、社会的なプラットフォームが必要とのこと。
ちょっとわかり辛いが、評論の著者曰く、社会的なプラットフォームとはゲームを行う上での「ゲーム盤」の役目(ゲームのプレイヤー(国民)でもないし、ルール(法律)でもない)。
そして、プラットフォームとは、歴史認識を持った人間が発見する共有財産(コモンズ)のことらしい。
フランス社会は(色々と問題もあるだろーけど)まだその共有財産が失われていない。
ストなどはその行動が派手だから事件性だけが焦点になりやすいんだけど、重要なのはその合意形成に基づいてストという行動が行われてるってことだ。
一方、日本ではフリーターやニート問題が色んな所で取り沙汰されるけど、働いてる立場として問題なのは、「非正規雇用」って形が働いている人の意志とは関係なく増え続けてることじゃないかしら?(しかも働いてる人が望んでるみたく思われてる気がする)
そこには雇用する側の都合しか反映されてないように思う。
日本では、この社会的なプラットフォームってのはほぼ意識されてないらしい。
たしかに、昔親父が毎年参加してた「春闘」でも、話題になるのは賃金のことだけで、賃金以外の「労働者の権利」って話はほとんど聞かない。だから、高度成長が達成されて所得がほぼ平均化されると、運動の目的が形骸化されちゃって、春闘(スト)自体が行われなくなったのかな?と思う。
フリーター&ニート問題と一緒に語られる格差社会の問題も、ちょっと論点がずれてる。
ヨーロッパでは、底辺の幸せが保障されているならば格差OK。
アメリカでは、底辺にも等しく階層上昇の機会が与えられるならば格差OK(所謂アメリカンドリーム)。
日本は今まであまり格差の無い社会だったけど、そろそろ転換期ってことだろう。
そして、日本の歴史の延長線を辿ると、アメリカじゃなくヨーロッパ流の格差の方が肌に合う(アメリカの格差はあまりに激しすぎるので)。けど、今進んでる格差社会化は、アメリカを手本にしてるからどうしても反発が大きくなる。
格差自体はあって当然の前提で、どういう格差ならみんな納得できるの?って事を、真剣に考えた方がいいんじゃないかと思う。
フランスでの週35時間の平均労働時間は、こうした背景のある中で達成されてる。
そこには「金儲けより安らぎのある生活がいい」「経済成長力や国際競争力が下がってもOK」という合意が感じられる。
僕が心底羨ましいと思うのは、こういう合意が出来る基盤があるってことだ。
別に毎年経済成長する必要はない。政治家が国が借金まみれだから経済が右肩上がりじゃないと返済できないと言うが、それは唯の言い訳、嘘っぱちだろう。
国際競争力が落ちても別に問題無い(生活レベルが落ちてもたいして気にならんし)。それよりも、馬鹿みたいに働いてる今の状況の方が、どう考えても異常だし不幸だと思う。
しかし、背景知ると日本で週35時間労働を実現するのはかなり厳しそう…(笑)
日本人が色んなことを柔軟に吸収できるのも、日本流のプラットフォームに基づいた寛容さのおかげ。
その寛容さがあれば、まだ方向転換は可能だと思う。
ただし、今までは意識せずに享受できたその恩恵も、プラットフォームが崩れてきてるよーに思う今日この頃、そろそろ意識し始めないと手遅れになるんじゃないだろうか?
日本人は、忙しいのよね。
でも、勤勉な人種がいないと、世界は発展しない。
おっ、初コメントありがとさんです。
…やっと、コメントしてもらえましたね(笑)
たしかに、そーなんだよねー。
日本人の勤勉さってやっぱ良いとは思ってて、外人のいい加減さにたまに呆れる事はある。だから、今の勤勉さで1年に1ヶ月間程長期休暇が取れるよーになればそれでいいかな?って思ったりする。。