イーホームズの元社長、藤田東吾さんが書いた「月に響く笛 耐震偽装」って本を読んだ。
耐震偽装問題は、一昨年の秋頃に問題が発覚して、姉歯建築士、建築会社ヒューザー、そして、確認検査機関のイーホームズが全ての悪者に仕立てられ、既に国民の間では事件そのものが風化してしまった感があるが、とんでもない。事実は完全に隠蔽されていたってことが、この本を読めば一発で理解できる。
まさに渦中の人であったからこそ書ける事実は、時系列に書かれてて非常にわかりやすい。そして、この事件でイーホームズがほんとに理念ある誠実な会社だった事、そしてそんな誠実な会社が公的権力の横暴により、社会から抹殺されてしまった事を事実としてしっかり認識する必要がある。
一通り読んだ感想を率直に言うと、事実は実はそんなに複雑な構図では無いと気づかされる。
要するに、国土交通大臣お墨付きの構造を検査するためのプログラムにバグがあった。。それだけなのだ。いや、ほんとに問題の本質はそれだけ。つまり、プログラムを認定した国土交通省の責任だ。
もう、これを認めてしまえば話は終わるのだが、省庁はミスを認めない。他人のミスは徹底的に追求するくせに自分達のミスを認める自浄作用を、日本の官公庁は持っていないのだ。
国土交通省が責任を逃れるためには他にスケープゴートが必要、その矛先が姉歯、ヒューザー、イーホームズに向けられた。簡単に言ってしまうと、そーいう話である。
もちろん国土交通省にコネのある元大臣の伊藤公介と、その支援をしていたヒューザーの小嶋(旧)社長の関係や、事件の真実を伝えるジャーナリストとしての責務を忘れ、記者クラブの恩恵を受けるために官僚の言いなりになるマスコミ各社のヘタレぶりが事態をさらにややこしくしてしまうわけだけど、本質はプログラムバグなのである。
つまり、そー考えると、大元の検査プログラムに問題があったので、それを知っていて構造計算書を作っていた建築士や建築物に対して全責任を負う建築主は責任があるとしても、検査機関であるイーホームズには責任が無いってのはそりゃそーだろね、ってすぐに納得できる。
この問題を調べる中で知ったんだけど、建築を行う場合、色んな役割の組織がプレイヤーとして登場する。ざっと述べると、
(1)建築主
(2)建設会社
(3)設計事務所(構造/意匠/設備)
(4)建築士(構造/意匠/設備)
(5)確認検査機関
の5プレイヤーがいる。
まず(1)建築主がオーナーから依頼を受けて建築を引き受け、(2)建設会社に工事を発注、建設会社は(3)設計事務所に設計の依頼をする。設計事務所と(4)各建築士が同じ場合もあるけど、設計事務所には建築士が居なくて、個人の建築士に仕事を発注してる場合もあるだろう。そして、仕事を請け負ってくれた建築士が大臣認定プログラムソフトを使って構造計算書を作成、その資料を(5)確認検査機関がチェックしてOKであれば、工事開始。完成後オーナーへ引き渡す、ってのが基本的な建設作業の流れだろう。
その他の隠れたプレイヤーとして、
(6)建築研究所(コンサル)
⇒総研:内村健
(7)検査プログラム認定組織&開発会社
⇒財団法人日本建築センター&ユニオンシステム
(8)国土交通省
(9)政治家
⇒伊藤公介、安倍晋三
その他多数の国交族議員
ってのもいるが、とりあえずここでは置いておく。
これに今回の事件で出てきた会社を当てていくと、
(1)ヒューザー
東日本住宅
サン中央ホーム
(2)木村建設
(3)平成設計
姉歯設計事務所
(4)姉歯秀次建築士
(5)イーホームズ
東日本住宅評価センター
って感じになる。
事件の発端は外部からの情報提供だけど、イーホームズはそこから独自の調査で21件の構造偽装を発見して国土交通省へ持ち込み、ここまで問題を明るみにしてってわけだ。
ちなみに後に発見される、姉歯以外の偽装物件に関しては、
(1)アパグループ
伸明ハウジング
(2)藤光建設
(3)田村水落
(4)橋本清建築士
(5)日本ERI
川崎市
になる。
これはほとんど国民には知らされておらず、ほぼ隠蔽されてる。
その理由はアパグループの元谷会長が、安倍晋三の後援会「安晋会」の副会長をやっているという、何ともわかりやすい構図。最初の事件で伊藤公介旧国土交通大臣と資金援助していたヒューザー小嶋氏の関係と同じ。ただし、今回は1代議士じゃなくて総理大臣(当時総理候補)だ。何が何でも事件をもみ消そうと自公が躍起になるのも無理は無い。そして、このスキャンダルを隠すために、口封じ以外説明のしようがない、藤田さんの別件逮捕に繋がるわけだ。
これをちゃんと解決しようとすると、日本経済にかなりのダメージを与える事になるだろう。。確実に今の景気はストップする。しかし、見過ごして良い問題ではない。この問題に真摯に取り組む事もせず、過去最高の景気を謳ってるのだから、好景気が聞いて呆れる。
別に結果として日本経済が壊滅的なダメージを受けて貧乏になっても良い。また立ち直ればいいからである。日本人にはそれだけの力があると僕は思う。しかし、こういった問題を無視して不誠実な社会をこのまま維持し続ければ、それこそ10年後20年後に、2度と立ち直れないよーな壊滅的なダメージを受けることになる。。そんな気がする。
…この本で一番バカだと思ったのが、ものの見事にマスコミに騙されて、イーホームズを悪者と決めつけ、ここぞとばかりにイーホームズに罵詈雑言メールを書いた人達だ。マンションを買った当事者ならまだ理解できるけど、明らかに第3者なのに、事実を自分で調べようともせず、自分のヘタレぶりを社会的に認定された悪者を叩くことでストレス解消している。。ほんとみっともない人達だ。。
いい加減、うちら国民は官僚や政治家、マスコミにバカにされまくってる事に気づこうよ。。