タイトルの通り、「プライバシー」=「個人情報」について考えてみたい。
きっかけは「PUBLIC」という本を読んだこと。
この本は、「フリー」「シェア」とともに、「Web2.0」から「Web3.0」へ向かうこれから先のWeb社会の未来(方向性)を示唆する上で、大変興味深い3部作の3冊目。著者は3冊ともバラバラなんだけど、編集元(NHK出版)が同じコンセプトで発売したみたいね。慧眼です。著者は別なんだけど、監修したのは3冊とも元ワイアード日本版の編集長だった「小林弘人」さん。日本でネットの未来を語る上では間違いなくキーパーソンの1人。
さて、タイトル通り、扱っているのは「PUBLIC(公共)」なんだけど、当然「パブリック」について考える上で「プライベート」を考えることは避けて通れない。
なので、この本の構成も、「パブリック」とは何か?そのメリットは?などを最初に説明し、歴史的に見て、「パブリック」と「プライベート」の概念が社会環境とともにどう変化してきたかをざっくり解説している。以下の目次見ると何となくわかると思う。
イントロダクション―大公開時代
パブリックの預言者マーク・ザッカーバーグ
パブリックの選択
“パブリックネス”のメリット
プライベートとパブリック その歴史
パブリック・メディア
プライバシーとは何か?
僕らはどこまでパブリックだろう?
パブリックなあなた
シェア産業
スーパー・パブリックカンパニー
人民の、人民による、人民のための…
新しい世界
プライバシーとは?
で、「プライベート」とは何か?とは要するに「プライバシー」とは何か?ってこと。
この本でも1章まるまる割いて解説してる。まぁ、1章短いんだけど(笑)
本書を読んだ上で、「プライベート」と「パブリック」を左記のように整理してみた。
「プライベート」領域は結構わかりやすい。
「名前」や「住所」、「生年月日」「性別」「電話番号」は普通として、「家族構成」や「現在の所在地(位置情報)」、「趣味」「嗜好」「関心」「意見」などが「プライベート」、つまり「個人情報」と言える。
本書では「パブリック」は単にNot「プライベート」ではない、と述べている。まぁ、そのとおりではあるんだけど、「プライベート」かつ「パブリック」である状態ってのはあり得ないと思う。私は「?領域」という領域が「プライベート」と「パブリック」の間にあると解釈した。とりあえず「グレー」領域と呼ぶ。
この「グレー」領域、例えば、「病歴」や「DNA情報」、「犯罪歴」、「学歴」や「職歴」、「クレジットカード情報」「購買情報」、検索サイトの「検索履歴」などがそれに当たると思う。この情報は、「1個人でコントロールできない情報」だ。「病歴」や「DNA情報」などは、それを調べる(診断する)第三者が絶対に必要。たぶん「医者」なんだけど、医者が持っている情報は「私」ではコントロールできない。「犯罪歴」も同様。こっちは「警察官」。「学歴」「職歴」は、過去に履歴書提出した会社でどう扱われてるのか全くわからん(「職歴」は最新情報ではないけど。。)。Googleの「検索履歴」なんか、もし公開されたら趣味嗜好がかなり丸裸にされてめちゃ恥ずかしいので全力で防止したい(笑)
(厳密に言えば、「名前」や「住所」「生年月日」「性別」も住民票や戸籍謄本見ればわかる。別に閲覧禁止されてるわけじゃないので、この情報も「グレー」領域と言えば「グレー」だな。。)
どの情報も技術的/規則的(守秘義務とか)に強固なセキュリティがかかってるわけだけど、仮にGoogleがハッキング受けて情報抜かれて公開されてしまったら、私個人では防ぎようがない。どのケースでも、自分が隠したいと願っても、他に知っている(コントロールできる)人がいる限り、完璧に隠すことはできない。
人によって「プライバシー」の解釈が別れるのは、この「?(グレー)領域」の解釈が違うからなんだろうと思う。
で、「パブリック」領域とは、「プライベート」+「グレー」以外の領域というのが私の解釈。
本書では世界最大のSNSサイト「Facebook」の情報公開の範囲が例として挙げられてた。たしかにこれはわかりやすい。まぁ、この範囲はまた変わるのかもしれんけどね。。
- 自分のみ
- 親しい友人まで公開
- 全員に公開
自分のみは「プライベート」だ。全員公開は当然「パブリック」。で、「親しい友人まで」は「グレー」領域だ。友人に公開している以上、その友人が別の誰かに公開するコトは止められない。
情報のコントロール
領域の理解は上記で良いとして、あとは自分がどこまで公開するか、という各個人の判断の問題。公開をコントロールするのが各個人だとすれば、人によってどの情報が「プライベート」で、どの情報が「パブリック」なのかが異なるのも当然。なので、万人が納得する線引きは難しい。
例えば、私はFacebookで「名前」「生年月日」「性別」「電話番号」、「趣味」や「関心」の一部は公開してる。「住所」も一部のみ。当然「購買情報」なんて公開してない。本書では「購買情報」をシェアする「Blippy(ブリッピー)」というサービスが紹介されてたけど、私は現時点ではさすがにここまでやろうと思わない。(まぁ、Blippyはサービス内容をレビューサイトに方向転換したらしいけど。。)
けど、人によっては「電話番号」を公開したく無い人も当然いるだろうし、「名前」すら公開したく無い人だっているはず。万人が納得する線が引けないのであれば、「どの情報が共通の個人情報か?」をこれ以上考えても結論出ないだろうな。。
結局「プライバシー」について重要なのは、その情報が何であれ、「当人が情報を公開する/しないをコントロールできるかどうか」ってことだ。
ここが貫徹されてれば、私としては無問題。
で、一度「パブリック」にしてしまった情報は元に戻しようが無い。自分で公開するという選択をした以上は自己責任だ。もっとも、「グレー」領域については政府等のパブリックな組織でルール(法律)を決めるしかない。逆に、「グレー」領域の情報は、警察など政府機関の命令で他者が閲覧することも可能。アメリカとかでは「グレー」領域はほぼ閲覧不可なんだろうか?政府はあくまで「管理だけしている」という考えが根付いてそう。日本はプライバシーについての関心が低いので、知らないうちにかなり侵食されてる。「盗聴法」や「コンピューター監視法」の問題は、この「グレー」領域をどう扱うかを巡っての、政府と市民の間の綱引きなわけだ。
とりあえず「プライバシー」について、頭の整理がついたな。
今後またこの手の話を考える上で良い土台になりそう。
最後に
ちなみに、今回紹介した本は、タイトル通り出来るだけ「情報はパブリックにすべき」という意見。私も同意見。デメリットよりもメリットの方が圧倒的に大きいので。パブリックにすることで他者と「つながり」を築ける。結局パブリックにする最大のメリットはこれなんだよねー。このブログでももっと「つながり」意識して書くようにしないとね。
蛇足だけど、16世紀にグーテンベルグの活版印刷機が発明された当時の既得権益者の反応が、現在の様々な情報がパブリックになりつつある世の中での現代の既得権益者と同じ、って話がすごく興味深かった。歴史は繰り返すってホントやねー。人間って賢くなってるのかね。。。技術の進歩より人間の進歩の方がどう考えたって遅い。今回は進歩(変化)できる良いチャンス。その一員として乗り遅れないように、どんな形でも良いので関わりたいもんです。願わくば。