天才! 成功する人々の法則

マルコム・グラッドウェル氏の新作。
前回の「第1感 「最初の2秒」の「なんとなく」が正しい」に続き、2冊続けて氏の著作を読むことになった。

そして、本の訳者はご存知、勝間和代氏。最近色んなところで目にする、セルフプロモーションしまくってる方。ほんとこの人、よくメディアで見かけるようになった。

元々、グラッドウェル氏の最初の著書「急に売れ始めるにはワケがある」は、勝間さんが薦めてたから読んだのだが、内容の面白さにすっかり著者のファンになった次第。。

なので、そんな氏の新作、いやが上にも期待は高まる。
で、読み終わった感想としては・・・・いやー、参りました。。
もうほんとに面白いんだもの、この人の本。

今回扱ったテーマは「天才」についてだが、「天才」は個人的な資質/素養が大事というのが一般的な通念。しかし、この本を読むと、その通念が完全に間違っていることがわかる。

正確に言えば、必要条件ではあるのだけど、十分条件ではない。

一番わかりやすい例として、IQ「195」の人が紹介されているが、この人のエピソード読むとほんとにそれを痛感する。この人は文句無く「天才」。しかし、歩んだ人生は決して幸福では無いし、過去周りから正当な評価を受けてこなかった。

そう、つまり「天才」は個人の素質というハード的なスペックだけではなく、
周り(環境)が与える好機(チャンス=opportunity)
が何より大事。

それが第一部のテーマ。

この人の本は例題がすごく興味深くて読んでて楽しいのだが、今作品も健在。
カナダのプロアイスホッケー選手の生まれた月が、「1~3月」に偏っているというデータ。事実。それ自体すごく興味深い。
しかし、これは、偶然では無い。そして、1~3月生まれの人が10月~12月生まれの人より「才能」に恵まれていたわけでもない。

恵まれていたのは「好機」だ。

カナダでは学校の学年を1月生まれから分けるらしい(日本では4月生まれ)。
つまり、1月生まれの人が同学年では一番成長が早い(体格に恵まれている)。ということは、同じ学年でも、少しだけ体力的に有利であり、それゆえに良い「好機(チャンス)」にも恵まれる。

そのチャンスと個人の努力を積み重ねた結果、プロへの道が遅生まれの人よりも開かれることになる。

日本で生まれた場合だと、4月~6月生まれの人がより有利ということになる。
これは生まれた場所(国)の社会システムにより決まることで、個人では選べない(・・もちろん、そういった不公平を生まないよう、「機会均等」の場を提供するのが「政治」の役割であるのは言うまでも無いが、実際は上手く調整は出来ていない)。

これは、当たり前と言えば当たり前のこと。しかし、改めて指摘されると大変納得。目から鱗。よく今まで疑問に思わなかったもんだ。。

そして、他にも目から鱗だったのが「一万時間の法則」。

これはもう完全に同意。
「一万時間」=「10年」と置き換えても良い。

つまり、1つのことを「一万時間(10年)」続けてやれば、何かしら到達する高みがあるということだ。

最近痛感するのだが、「続けられる」ということは1つの才能だ。
継続は力なり」とはほんとに良く言ったもので、物事を「継続」させるためには、それを続けるだけの周りのサポート(金銭/機会など)も必要だし、自分の興味も持続しないと続かない。

ダイエット法とかも一緒。
結局テレビなどで紹介されるどのダイエット法でも痩せられるのだ。「続けさえすれば」。
大事なのは「続けること」で、個々の方法ではない。つまり、「続けるために如何に工夫するか?」をまず考える必要がある。

続けるための周りのサポートとして紹介される例題も面白い。
ビル・ゲイツは、「偶然」当時非常に珍しかったタイムシェアリングのコンピュータを導入したレイクサイド校へ行き、「偶然」同じ学校にある会社の設立者の息子がいたため、その会社でプログラムを書く機会に恵まれ、「偶然」ワシントン大学の近くに住んでおり、夜学校に忍び込んでパソコンを使うことが出来た。

そして、1975年1月に発売された雑誌「ポピュラー・エレクトロニクス」の特集記事、「世界初のパーソナルコンピュータ」。これを読む機会に恵まれ、その上まだ就職しておらず、かと言って若すぎもせず、つまりその当時「大学生であった」という「偶然」。

そんな様々な「偶然」が重なった結果は??
そう、「一万時間」である。
ゲイツはプログラムを「一万時間」続けるに辺り、個人的興味だけでなく、「好機」に恵まれた。
それが現在の彼の成功につながっている。

大変興味深い事例。

これは、よく言われる子供の早期教育論とは真っ向から反発するように思う。
IQの高さや詰め込みの知識が重要なのではない。「好機(チャンス)」が何より大事なのだ。

まぁ、「英語」学習だけはそういう意味で重要かも。。
「英語」が出来れば、海外へ行く「好機(選択肢)」が生まれるので。
(ただし、行った先で何を「続けられる」かは全く別の話だが。。。)
日本より海外に行った方が「続けやすい環境」であるならば、海外へ行くのも良いと思う。

と、かなり長い書評になってしまったが、それだけ目から鱗だったし、面白かった。
1部に比べ、2部は個別具体例だったので、若干トーンダウンな感があったが、それでも全体的な面白さを損なう内容では無い。

あぁー、楽しかった!!!!
それが読み終えて、一番素直な感想。

次回作は何年後になるかわからないが、今から楽しみだ。

以下は目次。

プロローグ ロゼトの謎

第一部 好機
第一章 マタイ効果
第二章 一万時間の法則
第三章 天才の問題点 その一
第四章 天才の問題点 その二
第五章 ジョー・フロムの三つの教訓

第二部 「文化」という名の遺産
第六章 ケンタッキー州ハーラン
第七章 航空機事故の“民族的法則”
第八章 「水田」と「数学テスト」の関係
第九章 マリータの取引

エピローグ ジャマイカの物語

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