山口一男さんの著書。
著者は社会学者とのこと。
社会学は学生のとき専攻していたこともあり(当時は全く興味なかったけど(笑))興味ある分野だし、その社会学(社会科学)のネタを物語形式で展開している、その試みが面白いなーと感じ、また最近ビジネス系の本ばかり読んでいて、たまには物語も読んでみようかなーと考え、手に取った本。
物語の後に、どんな社会科学的概念が盛り込まれているのか、解説が載っているのが嬉しい。まぁ、説明してくれないとわかんないよね(笑)
さて、目次…という程ではないが、載っている物語は以下の2つ。
六つボタンのミナとカズの魔法使い—社会科学的ファンタジー
ライオンと鼠—教育劇・日米規範文化比較論
六つボタンのミナとカズの魔法使いで扱っている社会科学的概念は、以下が紹介されている。
囚人のジレンマ
共有地の悲劇
予言の自己成就
アイデンティティ
ダイバーシティ
カントの道徳哲学
規範と自由
統計の選択バイアス
事後確率
何となく知っていることに対して、名前を付けたのが上記の概念と言っても良いのかな。。
本のタイトルにもなっている「ダイバーシティ」は、「多様な人々に社会的機会を平等に開いて、より多くの人々が自らを生かす可能性を広げられるような社会制度を構築すること」と述べられている。
まぁ、そうだよね…って概念(笑)
うーーん、この本、話の内容自体は興味深くて結構面白いんだけど、この話を通して何を伝えたいのか、誰に対して伝えたいのか(ターゲットは誰?)が今イチ良くわからなかった。。
「ライオンと鼠」の話も同じ。
イソップ童話の「ライオンと鼠」が、日本とアメリカでどんな話として普及してるのか、その比較を通して文化の違いを理解する、またその舞台設定として、大学の講義の中で、教授を主人公にして学生同士討論させながら話を展開していくという、その設定は面白い。
面白いんだけど、この話を通して伝えたいのは文化は違うってことと、その具体的な違い…だけ?その違いを認めましょうってこと?うーーん、何だろうな。。とよくわからないまでもそれなりに楽しんで読んでいたら、あとがきで、KY(空気が読めない)という言葉や、過度に周りの空気を読むことだけを尊重するような社会を批判しているので、これは若い人に向けて、多様性を尊重する社会を作った方が良いんじゃない?的なメッセージを込めて作ったんだろうな…と、とりあえず納得(その割には若者が手に取るような装丁の本でもないが。。)。
それなりに面白いんだけど、何か物足りなかったというのが、正直な読後感。
割と自分にとっては当たり前な概念ばかりで、新しい知見が無かったからかもしれない。
社会学を学ぶ(社会を知る)最初のステップとしては、良い本なのかなーとは思う。