急に売れ始めるにはワケがある

マルコム・グラッドウェルさんの著書。

氏は学者とかではなく、ジャーナリスト。
ジャーナリストらしい情報収集力で、モノが急に売れたり、何かが急に始まったり終わったり、広まったり沈静化したり…何故そんなコトが起こるのか?を、すごく解りやすい例を交えながら解説した本。

内容に触れる前に言っておきたい。

はっきり言って名著!!
もう目から鱗がボロボロと落ちまくり。。
この本が800円くらいで買えてしまうというのが信じられない。最近のしょーもないハードカバー本が1000円以上するのがバカらしくなるし、たまらなく頭に来る。

これぐらい内容の濃い本を書いた上で1000円の値段を付けてみろ!!と言いたい。

さて、目次は以下の通り。

はじめに ティッピング・ポイントとは何か?
ハッシュパピーの不可解な人気上昇
NY市犯罪率の低下、その謎
ティッピング・ポイント — すべてが一気に変化する劇的な瞬間
予測を超えた感染の動き
感染における臨界点

第1章 爆発的感染、その3原則
梅毒感染の謎
原則1 少数者の法則
原則2 粘りの要素
原則3 背景の力

第2章 「80対20の法則」から「少数者の法則」へ
口コミ伝染の威力 — アメリカ独立革命の場合
社会をつなぐコネクター
コネクターの条件
友達の輪
世界のあらゆるところに顔を出すコネクター
人の可能性を感じる資質
弱い絆の強さ
口コミ伝染の仕掛人
通人とはどういう人か?
恐るべきデータバンク
無私の人
説得のプロ — セールスマン
説得における三つの特徴
感情を伝染させるメカニズム
外から内へ向かう感情
革命と少数者

第3章 粘りの要素
「セサミ・ストリート」という教育ウィルス
記憶に粘るメッセージ
広告業界の伝説、ワンダーマンの「金の箱」
「恐怖の実験」と粘りの工夫
くず情報を超えるために
「セサミ・ストリート」成功の秘訣
「粘り検出装置」による実験
指標追跡による粘りの追求
「セサミ・ストリート」をいかにして超えるか?
「ブルーズ・クルーズ」の物語性の勝利
繰り返しの効果
「ブルーズ・クルーズ」の徹底した粘り
余白に小さな変更を加える

第4章 背景の力
地下鉄殺人事件
NY市の犯罪伝染病、その収束の謎
感染は特殊な背景から生まれる
「割れた窓」のある風景
落書きと無賃乗車
背景が環境より重要になる場合
背景と内面の力学
検証1 — 模擬監獄の実験
検証2 — 正直な人はいつも正直か?
性格はその場の背景によって決まる
神学生の良心を試す
犯罪を防止するティッピング・ポイントとしての背景

第5章 「150の法則」という背景
あるベストセラーの謎
小規模集団の持つ力
150の法則 — 一夜にして集団の性質が変わるティッピング・ポイント
集団が巨大化するときの危険性
ゴア・アソシエイツ社の150人戦略
親しい人のあいだに成立する「交換記憶」
大規模な感染の原動力となる小規模集団

第6章 商品はどのようにして感染するのか?
エアウォークのクールな靴
イノヴェーターと多数派
感染を媒介する翻訳者
噂の伝播と翻訳
梅毒の街の翻訳者
トレンドセッターの思想を翻訳する広告
エアウォーク社の誤算

第7章 自殺と禁煙
十代の自殺感染 — ミクロネシアの場合
十代の喫煙と自殺を結ぶもの
自殺を呼ぶ男 — ティッピング・ピープル
彼らがタバコを吸う理由
喫煙における粘り
大人は子供の喫煙を止められない
鬱病と喫煙
禁煙のためのティッピング・ポイント

第8章 ティッピング・ポイントを押せば世界は傾く
美容院から始まる乳癌予防
限られた資源を一点に集中させ、一気に投入すること
希望の一点 — ティッピング・ポイント

目次が長くなってしまったが、とりあえず小項目まで全て書き出した。
その労力をかける価値は確実にある。

著者の主張は、「ティッピング・ポイント」の一言に収斂される。
まぁ、これが原題なので当然と言えば当然。

これは押せば傾く、物事が劇的に変化する、感染が始まる、坂へ転げ始めるギリギリのポイントのこと。

そして、その爆発的感染には以下3つの要素が必要と説く。

1.少数者の法則
2.粘りの要素
3.背景の力

少数者の法則では、以下3タイプの少数者が感染を広めることを説明している。

1.コネクター(媒介者)
2.レイヴン(通人)
3.セールスマン

このタイプ分け、フレームワークは秀逸。ほんとに解りやすい。
解説が載っているので読めば必ず納得する。

また、粘りの要素では、例えば、爆発的に広がる噂などには、その情報に「粘り」があるとのこと。
この「粘る」という表現が凄い。まぁ、日本語なので翻訳者が上手いというべきか。。

「粘る」という言葉には、自分はあまり良い印象を持ってない。
こびり付いてて離れない、なんかネチョネチョした、気持ち悪い感触がある。
しかし、だからこそ、この表現自身が文字通り「粘る」。

頭(記憶)の片隅に、こびりついて離れない。

こういう要素が、感染する「モノ」には備わっている。
たんに知らせるだけではダメで、頭に残る工夫をしなければならない。
この辺りは、CMなど広告作ってる人達が、昼夜考えていることだろう。。

背景の力も面白い。
実験が何個か紹介されているが、人の行動は内面的な価値観だけでは簡単に決まらないというのがほんとによくわかる。置かれた状況(シチュエーション)に相当影響を受ける。

「割れ窓」理論などは有名なので知ってたが、こういう文脈で読むとすごく説得力がある。

150の法則も目から鱗。
なるほどねー、150人の壁か。。
「交換記憶」というのは、自分流に言えば、「外部記憶装置」だ
「このことはこの人に聞けばわかる」という環境は、非常に連携しやすい。
この辺は経験あるからよくわかる。仕事の能率は確実に高くなる。

その人数に制限があるというのが面白い。
具体例としての村落の人数など、すごく興味深い。

最初から最期までとにかく面白くて、マーケティングに興味を持ち始め、その仕事をするために最近転職までした自分としては、ほんとにほんとにタメになる内容だった。

今後絶対に自分の血肉になるという確信がある。

マーケティングに携わる人間であれば、必読の書である。
久々にほんとに面白くてタメになる本を読んだ。
すばらしい読後感。

だから読書は止められない(笑)

余談だが、帯には「勝間和代氏推薦」とある。
勝間さんファンは絶対読むことお勧めする。
文字強調の仕方とか、氏がかなりこの本から影響を受けてるのがわかる。

ほんとに読みやすい。
もし仮に自分が本を書くとしたら、こういう解りやすい文章で、表現方法で、面白くてタメになる、こんな本を書く事を、目標としたいものだ。

今のところ「急に売れ始めるにはワケがある」にコメントは無し

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