人月の神話 狼人間を撃つ銀の弾はない

フレデリック・P・ブルックスさんの著作。

発行は何と1975年。
つまり同い年!!

氏は、IBMの古いオペレーティング・システム(OS)「OS/360」の開発に携わっていた方で、その経験を通して得た「ソフトウェア開発」に関する問題点や今後の展望などが示されている。

何せ古い本なので出てくる単語が古めかしいが、大枠は「組織論」つまり「人間論」でもあるので、今でもそのメッセージは十分通用する。

氏がこの本で書いた、ブルックスの法則「遅れているソフトウェアプロジェクトへの要員追加はさらに遅らせるだけだ」は、今も全く変わっていない、普遍的な真理のように思える。

目次は以下の通り。

第1章 タールの沼
第2章 人月の神話
第3章 外科手術チーム
第4章 貴族政治、民主政治、そしてシステムデザイン
第5章 セカンドシステム症候群
第6章 命令を伝える
第7章 バベルの塔は、なぜ失敗に終わったか
第8章 予告宣言する
第9章 五ポンド袋に詰め込んだ十ポンド
第10章 文書の前提
第11章 一つは捨石にするつもりで
第12章 切れ味のいい道具
第13章 全体と部分
第14章 破局を生み出すこと
第15章 もう一つの顔
第16章 銀の弾などない—本質と偶有
第17章 「銀の弾などない」再発射
第18章 「人月の神話」の命題—真か偽か
第19章 「人月の神話」から二十年を経て
エピローグ 五十年間の不思議、興奮、それに喜び

構成は、15章までが1975年に書かれた内容で、16章が1986年に書いた論文を書き足したもの。17章から19章はさらに10年後の1995年に、この20周年記念増訂版を発売するに当たり、書き足した部分。
よって、およそ10年毎に書いた文章が一冊に収まっている。

内容としては、「銀の弾」=「ソフトウェアコストを急激に小さくしてくれる特効薬」など無い!!というのがメインメッセージ。
プログラマの管理職向けに書かれた本なので、いかに開発をマネージメントするかという「組織論」を学ぶという読み方もできる。

1975年時点で「「銀の弾」が無かった」状況が、16章で10年後の1986年時点でどう変わったか、また17章〜19章でさらに1995年時点ではどうか?、時系列で俯瞰できる。また、その時間軸をさらに10年ほど延ばして、2008年現在でどうなのか?と、現在を考えることも出来る。

結論を言えば、2008年になった現在でも、「銀の弾」は存在しない。

著者が問題の本質として上げている「概念構造体の仕様作成(コンセプトの完全性と言い換えてよいか?)」などの要因は、結局「人」に依存しているコトなので、「人」が急激に進化でもしない限り、今後も「銀の弾」は見つからないだろう。。
(シェアウェアなどの考え方は認知&普及し、個人レベルでサービスはやりやすくなったけども。。)

まぁ、別に悲観しているわけではない。
著者が本で述べているように、プログラマは基本「楽観主義者」なので(笑)

「人月」の概念が使えるのは、「人」と「月」が互いに交換できる、つまり「作業者間で意思疎通しなくても仕事が分担できる場合にしか当てはまらない」というのは目から鱗。

この考え方を学べただけでも読んだ価値があった。

ただ、アメリカ人の本は比喩がよく多様されるが、訳者がへたくそだとかなり解りづらい日本語になってしまう。この本はそういう感じ。かなり読みづらかった。これは20周年記念として新たに発行された本なので、昔発行された本は訳者が違うみたい。そっちが手に入るのであれば正直そちらを読んだ方が良いと思う。

何にせよ、ソフトウェア開発の業界に居る人であれば、とりあえず読んでおいた方が良い名著だ。

今のところ「人月の神話 狼人間を撃つ銀の弾はない」にコメントは無し

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