ホワイトカラー・エグゼンプションへの思惑

既に色んな方がブログで取り上げられてるけど、改めてホワイトカラー・エグゼンプション(White-Collar Exemption)について考えてみたいと思う。

[テーマ1]
とりあえず議論の前提としては、僕は「残業」には大反対だ。

残業が当たり前だと考えてしまうと、効率的な仕事が出来なくなるからだ。効率性とは時間の制約がある中でどれだけ作業を行えるか…ということなので(もちろん、休憩しつつ体を休めて自己ケアを行うのも仕事のうち)、その前提である時間の制約をはずしちゃうと効率などどうでもよくなる。
結果的に残業してしまうのは仕方ないが、あくまで定時帰りを目指すべきだ。

仕事ができる人というのは、その限られた時間の中でどれだけ成果を上げたか?で判断されるべきだろう。そういう意味では成果主義万歳!!残業代を稼ぐために会社に残るような、意味の無い残業はなくすべきだ。

ちなみに、仕事を効率的に出来る人にどんどん新しい仕事が集中してしまい、結局残業してしまう…って議論もあるが、これは間違いだろう。そもそも何故残業するとわかって仕事を受けるの??仕事を受ける/受けないの判断も自分がやっているのだから、それで残業してしまう人は、結局仕事が効率的に出来ない人なんだと思う。

上司から無理を言われてやらざるを得ない、って状況も理解は出来るけど、それは最近の日本の会社は(自分のいるIT業界など特に)あまり労働組合が無く、労働者の権利が弱いのが原因であって、今回の議題とはちょっと筋が違う話。ただし、だからと言って嫌々でも仕事を引き受け続けてると、いつまでも状況は変わらないわけで、働く側からの意思表示はする必要がある。「定時帰り」という働く人の正当な権利を侵害されてるって事をもっと自覚した方がいい。

働く側がこういった意思を持って働き、その結果での残業であれば、経営側が残業代を払うのは当たり前だろう。

[テーマ2]
さて、ここで「成果」についてだけど、何をもって成果とするのか?それが問題。

結局、わかりやすい成果は「数字」でしかない。

けど、数字できっちりと評価できる役割の人は会社の中でも限られてる。
まぁ、人事(裁量)権を持ってる管理職の人たちは、期初なり期中なりに立てた売上/利益目標が成果基準になるわけで、元々そういった人たち(だけ)に適用される制度なんじゃないのか?

年収400万以上の人対象…なんて単に給与額(数字)を条件にして制度を適用しても、成果基準がわからず各会社で経営側に都合の良い基準を好き勝手に採用するのは目に見えてる。適用範囲の給与額がいくらであろうと問題じゃなくて、「成果」の考え方の問題だ。

ここでひとつ質問。。

成果主義について語るとき、最大労働時間のことばかり問題になる気がする。
つまり日本では1日8時間で1ヶ月160時間、180時間まではサービス残業って会社が多いと思うけど、みんながブログで言ってる通り、「仕事時間」=「給与金額」では無い。ってことは、仮に年間利益5000万の目標を掲げて、それを1ヶ月で達成してしまえば、残り11ヶ月は休んでてもいいのか?つまり成果主義を謳うのであれば、1ヶ月に160時間も仕事をする必要が無いんじゃないか?ほんとに労働時間と給与に相関関係が無いのであれば。。

そーいう考え方もセットで議論する必要があるんじゃないだろうか?
(…改めて考えるいい機会ではあるかも。。)

[テーマ3]
そもそも「ホワイトカラー・エグゼンプション」の制度自体の問題、というより、それを適用する国の社会システムが違いすぎる。

アメリカやヨーロッパは、働く側と雇う側で「残業」や「成果」についてある程度は事前にコミットしてて、互いに「契約」しているという自覚が双方にあるんじゃないだろうか?であれば、この制度も適用できるんだろうと思う。
けど、(その善し悪しは置いといて)日本では昔から会社に依存し、家族のような感覚で会社というコミュニティに入る。終身雇用や年功序列の時代では無くなった…なんてことも言われるが、実際に仕事してるとかなり根強くこの考え方が残ってるのがわかる。この考え方は会社システムを改革すれば変わるってわけではなく、日本人の会社へ依存する考え方そのものを変えない限り、おそらく無くならないだろう。

じゃ、それができるか?

僕は出来ないと思う。同一性の強い日本人には、会社とドライに「契約」を通して適当な距離を保つ事が出来ないんだと思う。高度経済成長後、ある程度の裕福さが達成されると労働組合が形骸化したのはその証拠だろう。そもそも大半の日本国民は、「憲法」を通して政府と契約している自覚も無く、自分の住んでる国に対してすらコミットしてないと思うし。。

これを何とかして変えるんだ!!という理想があり、社会システムを変えていくための戦略としてホワイトカラー・エグゼンプションを適用するなら賛成する。
けど、アメリカに言われたから議論が始まり、とりあえず適用してみるか?ってノリにしか見えない。何よりも、大手企業の社長が集まる経団連の人たちが、この辺の背景を理解してないとも思えない(理解せずに単純に適用できると考えてるのであればただのアホでしょうし)。。その上でこの制度を適用させたいって事は、「残業代カット」が目的と勘ぐられて当然だろう。

総理大臣の発言に見られるように何も考えてない政府は置いといて(笑)、経団連(経営側)にその思惑がかなり露骨に感じられるので、僕は今回のホワイトカラー・エグゼンプションには反対だ。

【関連ブログ】
ホワイトカラー・エグゼンプション 残業手当ゼロの恐怖
□ホワイトカラーエグゼンプションについて
残業代とホワイトカラー・エグゼンプション
□混乱を極めるホワイトカラーエグゼンプションの動向
 ⇒11日に厚生労働省が混乱を煽るような方針を発表したみたいですね。。

今のところ「ホワイトカラー・エグゼンプションへの思惑」にコメントは無し

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