細田守監督の最新作。
細田さんは「時をかける少女」(2006)で一躍有名になったアニメ監督。「時をかける少女」は一昔前(1983年)に原田知世さん主演の実写映画が制作されてるが、そのリメイク(というか続編?)。かなり大胆な解釈というか、活発なキャラクターが作品内でバタバタと暴れ回る、凄くアニメらしい、楽しい作品だった。
同じく監督をされた、ONE PIECEの劇場版アニメ「ONE PIECE THE MOVIE オマツリ男爵と秘密の島」(2005)も拝見した。ONE PIECEの他の劇場版は観ていないが、テーマが仲間の絆であり、子供向けとは思えない(…というか、完全に大人向けだったように思う)、ONE PIECE特有のお気楽なノリだけではなく、仲間内での感情の軋轢を扱った、かなり深いテーマの作品だった。そして、もちろんアニメとしても大変完成度が高かった。
そんな監督の作品なので、観る前から期待大。
近場の西宮ガーデンズのTOHOシネマズ「西宮OS」で、近場だからこその特権、レイトショー(1200円)で昨日映画を観てきた。
さて、内容だが、さすがという完成度。アニメとして。キャラも活き活きと動いてる。主人公とヒロインの声優はかなり演技が下手糞だったが、全体的にクオリティは高い。しかし、脚本、というか世界観にかなり穴があったように思う。
まず、事件の発端である「ハッキング」。もっと詳しく言うと「パスワード解除」。OZという仮想空間は、アニメらしい素晴らしい表現、早く実現してくれないかな?と思えるようなワクワクするような世界観だったが、人類の大半が繋がっているいわば超大規模なSNSサイトなんだよね、これって?最高のセキュリティが施されているはずではないのか?主人公含めて世界で55人も解いてしまえるような簡単な暗号が、管理者パスワードのはずがないじゃないか。。今のネットセキュリティに関する知識が無いか、あえて無視したかのどちらか。はっきり言って、現在の暗号は暗算で解けるようなレベルの代物ではない。
事件の発端なので、これが発生しないと物語が進まないわけで、主人公の特徴「数学オリンピックの代表になるくらいの数学力」が生きる場面はココにしかないわけだが、あまりに展開が強引過ぎる。。
また、既に日本ではかなり失われているであろう、大家族的な繋がりのある血族の中に、主人公が突如ほうりこまれる展開はリアリティが無いのだが、とりあえず良しとする。大規模サーバや漁船などアニメ的な強引な展開も必然性あるし面白いから良い。しかし、そもそもOZのハッキングPGは、「知識欲」のみを植えつけられたPGなんだよね。そして「ゲーム好き」。そんな特徴のPGが、何で衛星を原発に落とそうなんて考えるんだ??
こないだ、小説「アイの物語」を読んで、進化したAIは人間とは全く違った存在で、むしろ人間よりも倫理的である、という結論を感じた身として、どうもこの展開が納得いかない。何故コンピュータが人類の滅亡など望むのだろうか??
「世界を救え!!」という話は、昔からアニメで扱ってる使い古されたものだけど、さすがにここまで何度も扱われると嘘臭くなる。単に「家族を守る」って展開でもいいじゃないか。このアニメのテーマは「家族の絆」なわけだし。
小説もアニメもフィクションなので、現実的である必要は無い。しかし、前提となる「世界観」から逸脱するのは論外。どんなフィクションでも「世界観」が作りこまれていないと、作品自体の説得力を失ってしまう。
そういう意味で、ちょっとこの「サマーウォーズ」、世界観の環境設定が物足りなかった。
あとは「恋愛」。別にいらないよなー、この要素(笑)
この作品の中で、無理に主人公と夏希がくっつく必然性が無い。
前回観た「東のエデン」もそうなのだが、無理に「恋愛」話に持ってく必要無いんだけど。。
OZの表現とか素晴らしかっただけに、その2点が残念だった。
□「サマーウォーズ」公式HP
http://s-wars.jp/index.html