山本弘さんの著書。
著者の「アイの物語」を読んで深い感銘を受け、この気持ちが盛り上がってる間に前の小説も読んでみよう、ってことで手に取った本。
テーマは「神」。
「神が創ったシミュレーション」。
割と小説ではありがちな、この世は神が創ったシュミレーションゲームである、というオチ。オチというか、割と作品の早い段階でこのことは明らかになる。なので、オチというのはちょっと違うか。。
この作品独自の視点は、人間やその他動物の活動だけでなく、幽霊やUFO、ポルターガイスト現象などの怪奇現象も全て含めて、地球全体が1つの「グローバル・ブレイン」であるという考え方。地球は神が作ったAIでしかないというわけだ。しかし、ゼロ/無限大の概念を持った数学の限界に思いを巡らせると、この世は神がいい加減に創り上げたものと考えたくなるのもわかる。
神は人間に対して「善意」も「悪意」も持っていない、というのも新しい視点かな。まぁ、地球全体が1つのブレインだとしたら、人間1人なんて神経伝達物質の1つでしかないわけだし、我々人間がいちいち自分の脳の神経伝達を意識しないのと同様、良いも悪いも無いだろう。。
しかし、そんな神が存在する世界でも、結局人間が生きる上での結論は変わらない。
「正しく生きられるように」。
自分にしろ、他人(自分の子供)にしろ、「正しく生きる」ためにどうするかを考える。
「正しさ」=「正義」だし、立場の違う「正義」が結局争いを生んでしまうという理屈はわかる。それは真実だと思うのだが、「アイの物語」でも語られていたように、どんなに不完全な「倫理観」や「道徳観」だとしても、人間が生きる上では「正しい生き方」という指標が必要なのだろう。。その先に「神」が居るか居ないかはどうでも良くて。本書も、散々「神は居るのか?」について考察した結果、最後「神」はどうでも良くなってるし。
「私は信じる」
この言葉で本書は終わっている。
不完全であっても、信じるしかない。幻想とわかっていても。「正しい生き方」は存在するんだと。
ほんと、人間って愚かだし、不完全な生き物だなぁ。。
最後希望を持てる終わり方をした本書だが、個人的には空しさの方を強く感じた。