アル・ライズ&ローラ・ライズ親子の共著。
マーケティング脳とマネジメント脳を、様々な事例を元に比較しているのが本書の構成。
マーケティングの世界に足を踏み入れ始めた我が身としては、こういった違いを理解/把握しておくのは大事なこと。そう思って手に取った本。
さて、簡単な比較として、
■マーケティング脳=
右脳:視覚思考:全体的な思考:企業家
VS
■マネジメント脳 =
左脳:言語思考:分析的な思考:経営者
という対立軸が挙げられている。
これは著者達の経験を通して実感したコトだろうことは容易に想像できる。著者達がマーケッターの立場からマネジメント層の人達と何度となく衝突を繰り返し、何度となく苦い思いをして、その上でたどり着いた結論だろう。
経験していない自分としては、異論を唱える余地は無いのだが、個人的に本書を読んで感じたのが、「マーケティング」という立場を美化しすぎている、ということ。どうしてもそれを感じてしまう。全体的な思考とか、右脳派だとか、かなり好意的に書かれている。そして、分析的な思考や左脳、経営者的な思考がまるで悪いことであるかのような印象を受けてしまう。
これはちょっと違う。
どちらも大事だ。右脳も左脳も。
マーケッターにも分析的な思考は必要。感覚的な判断だけでは、それこそ「全体的」な思考など出来ない。
本としてまとめる上で、対立軸としてわかりやすい構成にしたのは理解できるのだが、ちょっと偏りすぎだよな。。本書を読むと、マーケッターのやる事は全て正しくて、マネジメント層の人達(経営者)はアホ、っていう印象を受けてしまうので(笑)。
そこが読んでいてかなり引っかかった点。
で、内容についてだが、正直言って新しい知見は得られなかった。結構期待外れ。
マーケティングの基礎をちゃんと理解してれば、言い方を代えただけの話ばかり。そこは残念。具体例が挙げてあるのは理解しやすくて有難かったが(ただし、例は全てアメリカ国内の消費財なので、日本人としてはピンと来ないモノも多い)。。
そう考えると、本書のターゲットが不明瞭。
誰に向けて書いた本なんだろう??
(マーケティングの入門書って位置付けなのかしら?)
読後が結構微妙な本。
本屋で内容ちょっと読んでみてから、購入を決断した方が良いかと思う。
(ちょっと長いけど)目次は以下の通り。
はじめに 右脳と左脳
序章 ビロードの厚い幕
第1章 マネジメントは「現実」に取り組む マーケティングは「認識」に取り組む
第2章 マネジメントは商品に力を注ぐ マーケティングはブランドに力を注ぐ
第3章 マネジメントはブランドを持とうとする マーケティングはカテゴリーを持とうとする
第4章 マネジメントはよりよい商品を求める マーケティングはほかとはちがう商品を求める
第5章 マネジメントはフルラインナップを好む マーケティングはラインナップを絞る
第6章 マネジメントはブランドの拡大を図る マーケティングはブランドの縮小を図る
第7章 マネジメントは“ファースト・ムーバー”を目指す マーケティングは“ファースト・マインダー”を目指す
第8章 マネジメントは“ビッグバン”を期待する マーケティングはスロースタートを予想する
第9章 マネジメントは市場の中央を狙う マーケティングは両極のどちらかを狙う
第10章 マネジメントはすべてを詰め込もうとする マーケティングは一語で表現しようとする
第11章 マネジメントは抽象的な言葉を使う マーケティングは視覚的な表現を使う
第12章 マネジメントはブランドをひとつにしようとする マーケティングはブランドの数を増やそうとする
第13章 マネジメントは才気を重視 マーケティングは実績を重視
第14章 マネジメントはダブルブランド派 マーケティングはシングルブランド派
第15章 マネジメントは永遠の成長を目指す マーケティングは市場の成熟に備える
第16章 マネジメントは新しいカテゴリーをつぶす マーケティングは新しいカテゴリーを生み出す
第17章 マネジメントは情報を伝えようとする マーケティングはポジションを獲得しようとする
第18章 マネジメントは顧客を一生、手放すまいとする マーケティングは顧客を短期間で手放すことをいとわない
第19章 マネジメントは割引券とセールが大好き マーケティングはそれらが大嫌い
第20章 マネジメントはライバルのまねをする マーケティングはライバルの反対を狙う
第21章 マネジメントは名称の変更を嫌う マーケティングは名称の変更をいとわない
第22章 マネジメントは絶えざるイノベーションに必死 マーケティングはひとつのイノベーションで満足
第23章 マネジメントはマルチメディアを礼賛 マーケティングはマルチメディアに懐疑的
第24章 マネジメントは短期的にものごとを見る マーケティングは長期的にものごとを見る
第25章 マネジメントは常識を拠りどころにする マーケティングはマーケティングの感覚を拠りどころとする