湯川鶴章氏の著書。
氏は時事通信社の記者さん。
タイトルの通り、「マーケティングのプラットフォーム」が今後どう変化していくか?というテーマについて書かれた本。
では、プラットフォームとはどういう意味か?
「マス」広告自体は本で書かれるまでも無く、既に終焉を迎えている。テレビや新聞、雑誌などの媒体力はネットの隆盛と反比例するように落ちている。「マス」といいつつ、テレビは既に日本国民全てを網羅するようなメディアではないし、今後復権することも無いだろう。
では、テレビに代わる、「マス」をカバーするメディアがあるかというと、現在では無いし、今後生まれるとも思えない。テレビ、新聞、雑誌、ラジオの既存メディアに加え、パソコン、携帯電話、そしてこの本でも書かれているデジタル・サイネージ(電子広告)など、より狭いターゲットに絞った「中規模マス」とでも言えばいいのかな?、より細分化されたメディアが新しく生まれている。
今後は、こういった1つ1つのメディアを何層もつなぎ合わせて、より広くより深い内容の広告をターゲットに発信していくことになると予想される。
もちろん、テレビCMに代表される時代の先端を行くエッジの効いた「クリエイティブ広告」が無くなることは無いだろうが、規模は確実に小さくなる。そして、その隙間を「広告テクノロジー」が埋めることになると氏は予想する。具体的には「Google」や「Yahoo」や「Amazon」だが、その他、Web解析ツールを作っている「Omniture」や、CRMツールの「Saleforce.com」、アドマーケティングプレイスの「DoubleClick」が紹介されている。
つまり、「マーケティングプラットフォーム」とは、こういったテクノロジーを組み合わせた「マーケティング」の仕組みのこと。この仕組みを使い、各ユーザに対して、サザエさんの「三河屋」さん的な、より身近な細かい気配りの出来るサービスを提供することが出来る。
個人的に気になったツールが、Omnitireの「GENESIS」。
これは、Omnitireの提供する「SiteCatalyst」や、Saleforce.comの提供する「Saleforce」、もちろん「Google」や「Yahoo」、「DoubleClick」も含め、こういったツールを提供する企業がその機能をAPI化して外部へのIFを設け、個々の機能を統合することが出来るツール。
このプラットフォーム概念をまとめたのが左記の図。
(Clickすれば大きな図が表示されます)
このツールを使えば、誰がどこからどんなキーワードでサイトへ訪れ、サイト内をどう巡回し、最終的に購入(コンバージョン)に結びついたのか。また、そういったデータから顧客属性を掴み、適切な広告をその顧客に対して、メールやデジタル・サイネージなど様々な方法で提示することが出来る。
つまり、「マーケティング」業務のかなり広範囲を技術的にカバー出来るのだ。これはすごい!!!
ただ、本の中でも指摘されているが、気になるのはこの流れは海外では活発だが、日本では今ひとつということ。。
原因もはっきりしている。こういったツールを使えば、広告主と広告掲載媒体はネット上で自由にマッチングが出来る。つまり「広告代理店」は必要無くなる。日本では「電通」「博報堂」などの代理店の力が異常に強い。とりあえず今もまだその力を誇示している。そういった会社からすれば、自分達の存在意義を失わせるような流れに乗るわけにはいかない。クリエイティブ広告作るにしても制作会社と直接やり取りすれば済むわけだし。ITゼネコン会社のように、戦略&管理という名の中抜きをする、中身の無い会社に代理店が凋落する可能性もある。
しかし、「広告主」の立場からすれば、代理店の栄枯盛衰などどうでもいい。
こういったツールを自分達で使いこなし、マーケティング戦略を立てられるようになることが理想。その上で、メディアや代理店とも必要に応じて付き合っていけばよい。代理店ありき…じゃなくてね。
一応その流れが生まれ始めているということが本を読んでわかった。
これがこの本読んだ一番の収穫。
本の量は200Pほどだし、大変読みやすい本。
Webのマーケティングに携わっている人であれば、読んでおいて損は無い。
何かしらの考える種を埋め込んでくれる。
目次は以下。
はじめに
序章 広告の「終焉」と「周縁」
第1章 広告からテクノロジーへ
第2章 ネットに拡大するマーケティングプラットフォーム
第3章 リアルとネットの融合1 デジタルサイネージ
第4章 リアルとネットの融合2 モバイルウェブ
第5章 そして覇者なき市場へ
第6章 次世代マーケティングプラットフォームの課題
第7章 メディアと広告そしてすべての企業の未来
おわりに