山崎養世さんの著作。
山崎さんは、現在与党となった民主党が政策として掲げている「高速道路無料化」の発案者。
この人のプレゼンを聞いていると、高速道路を「無料化」をする事で良い未来が訪れると、具体的なイメージが浮かんでくる。何故、世間で「無料化」が支持されてないのかがわからないくらい。まぁ、情報量が少ないし、国民はたいして興味も関心も無く、自分の頭で具体的にイメージもせず、だからこそインタビューやアンケートで聞かれても「関心ない」って答えてるから…ってのが実情だとは思うけど。
しかし、「地方分権」を実現する上で、「無料化」は避けて通れない。「東京一極集中」と「官僚主導政治」ってのは結局同じコトを言ってる。そこを変えるにはほんとに重要な政策。もっとも、敢えて皮肉を込めて言わせてもらうと、東京に住んでいる人にどれくらいこの問題が理解(実感)されてるのかは怪しいのだが。。
普通に自分の頭で考えると、この政策に別段問題は無い。(短期的な)財源の話で反論される人もいるが、利用料収入が無くなったとしても現在かかっているコスト圧縮&地域経済の発展を見込んだ山崎さんの反論を聞くと、筋が通っていて明らかに山崎さん側に分がある。かえってCO2が増えるという反論もあるが、これもおかしい。現在のガソリン中心の自動車を電動自動車へ移行する政策とセットで進めれば良い。それに、そもそも「高速道路無料化」と「電動自動車への移行」の議論は本来全く別の話だ。
鳥取という日本で一番人口の少ない県出身の自分としては結構切実な話(現在鳥取には「高速道路」は無いけどね…。そういう近視眼的な話ではない)。
ぜひとも、民主党には実現をしてもらいたい。
で、そんな山崎さんが次に打ち出している政策が本著。
「太陽経済」。
「太陽経済」は山崎さんの造語のようだが、要するに太陽を活用したエネルギー政策。日本の電力全てを太陽光発電でまかなうってのは現実的ではないし、本著でもそんな主張はされていない。原子力/風力/水力など発電方法の一つとして太陽光を使おうという話。それを実現できる高い技術力を日本(企業)は保有している。また、環境問題を解決できる高い技術も持っている。ならば、そのエネルギー/環境技術を活用して、中国、インドと良い三角関係を築き、経済を復活させよう、というのが本著での氏の主張だ。
これも大変筋が通っている。
先日、鳩山首相がアメリカの国連気候変動サミットで2020年までに温室効果ガス「25%削減」の目標を掲げたばかりだが、環境問題やエネルギー問題は今後一番熱いテーマ。各国間の排出権取引は経済的な効果も高いだろうし。それに、今後人口が増加する中国とインド(2050年予測として、中国は14億800万人、インドは16億5800万人)で、食料/エネルギー/環境の問題が表面化してくるのは避けられない。
1週間ほど前に中国の西安へ旅行した時に驚いたコトがある。それはみんなが電動のスクーター(バイク)に乗っていたこと。電動スクーターは音がしないので、歩いてる近くを通り過ぎるとき大変驚くのだけど、日本でもスクーターはまだガソリン中心なのに、中国でこれほど電動スクーターが普及しているとは思わなかった。
理由は「コストが安いから」。
理由は何でも良い。結果的に普及して環境に優しければ。充電する場所などはまだ多くは無いみたいで、その辺りはこれから解決していくのだろうが、部分的には環境対策で中国は日本より進んでいる所もある。
インドはまだ中国より遅れていて、インフラ整備から始める必要はあるだろうが、その協力を日本が出来るという話は、実際に中国の人たちの生活を見たばかりの自分としては、大変説得力があり納得出来る。
この政策が実現されるかどうかはわからない。しかし、1つの目標として掲げる価値は十分にあると私には思えた。エネルギー問題や日本の今後の方向性について少しでも興味ある方は、その1提案として本書を読んでみることをお薦めする。
以下は目次。
第1章 二〇世紀型経済が終わった(世界経済のすさまじい逆回転
レバレッジ借金経済の大破裂 ほか)
第2章 石油経済の限界(「エネルギー」が成長を止める
心配される食糧危機 ほか)
第3章 「太陽経済の世紀」の始まり(太陽経済とはなにか
「産業革命競争」が始まった ほか)
第4章 日中印が決める世界の行方(主役は日中印の「三角形」
「志」が決め手となる ほか)
第5章 日本「復活」の処方箋(東京一極集中からの脱却
高速道路無料化を実現する借金処理プラン ほか)