メディアが出さないほんとうの話

田中宇さんの著書。

氏のメールマガジンは一時期良く読んでた。学生時代だったか。仕事初めて間も無い頃だったかな?懐かしい思いで文章読ませてもらった。

今の激動する世界情勢を理解する上で、既存メディアが全く役に立たない状態なので、その他の情報源に頼る必要がある。所謂独自取材した上での2次情報ではないが、氏の視点は、メディアとは違う視点を与えてくれる。1つのフレームワークとして活用すると、世界が違って見える。

氏はジャーナリストではないのだが、英米など海外の情報を読み、歴史の流れを踏まえることで、帰納的にその意図を裏読み(推察)する形で、世界の各プレイヤーが現在何を考え、今後どんな戦略を取っていくのかを予測している。

さて、氏の主張だが、以下の構図が主張の中心を占めている。

「英米イスラエル覇権」VS「多極化主義」

これは昔メルマガ読んでときから主張されてる(…昔は理解出来なかったけど。俺も成長したもんだ(笑))。

このフレームに当てはめて世界を眺めてみると、たしかに色々と説明が出来る。まぁ、ブッシュがそんな裏を持って行動してたとはとても思えないけどね(笑)優秀なブレーンが居たと考えればあり得る話か。。

氏の「覇権 VS 多極」の見方の正否はとりあえず横に置いておくとしても、今後のアメリカの衰退は避けられない。これは間違いない。イギリスはもっと悲惨。アメリカはまだITがあるが。製造業は両国ともすっからかんの状態。人間の無尽蔵の「欲望」を媒介にレバレッジを効かせて、実体経済の数倍以上の利益(リターン)を得ていた金融経済は崩壊。両国の金融センターとしての機能も低下。今後はより地に足が付いた、通常の資産運用を金融業界(銀行)は行っていくだろう。証券市場も一緒。こんだけ痛い目を見ればしばらくは大人しくしてるだろう(アメリカは反省しない国なので、10年後には同じことしてるとは思うけど(笑))

そう考えると、多極化の流れは避けられない。

従来の「アメリカ」「EU」に加えて、「ロシア」「中国」「中東」「東南アジア」「アフリカ」そして、「日本」はその中でどう振る舞うか。。

この国という横軸に、「政治」「経済」「軍事」「エネルギー」という縦軸を組合わせると、世界をすっきりと理解できる。

本書で知った、中東(アラブ産油国)の「GCC」という新通貨の動きは面白い。ダイナミックな変動が生まれる予感。ロシアの「ルーブル」はちょっと微妙だけど、中国の「人民元」の地位は確実に今後高まる。+「ドル」「ユーロ」「円」とどんなバランスになるのか。。

エネルギーも、ロシアは「天然ガス」で完全に主導権を握った。中国も開発援助しつつ色々と動いてるみたいだし。「石油」も米英中心の石油メジャーは既に世界の産油量10%しか担っていないのか。しかも、米英以外の石油販売ルートだと、金額が安いというのも面白い。これに新通貨の流れが絡むと、確実に中東の影響力は高まるな。。

「台湾」の話は新鮮。中国寄りになったのね。。まぁ、アメリカに頼れない以上はその選択肢しかない。

うーーん、面白い。
色々と考える種になりました。大変有意義な本。

さて、最後に。

世界のダイナミックな動きを見るにつけ、情けないのが我が「日本」。
この大きな流れの中で、麻生政権の、「もう政治なんてどうでも良い」と国民に思わせるに効果十分な悪あがきを見せつけられ、一歩も変化の兆しが見えない日本社会。希望が無い。ほんとに無い。「何でも揃っているが、希望が無い国」と言ったのは村上龍だったか。。

主義主張で政党同士が別れているなら良いのだが、手足となる官僚が完全に別方向を向いてる。今だ米追従の外務省に、日本の独自路線を模索する防衛省、そして自分さえ良ければ他はどうでも良い財務省。この有様で何が「シビリアン・コントロール」なのかね??

今年総選挙は確実にある。
小沢民主党代表の資金問題でゴタゴタしており、ココに来てなお足の引っぱり合いをしてるが(検察の暴走って話もあるが。。)、はっきり言って今度の選挙は「政党」を選ぶ選挙じゃない。

公務員改革=官僚主導政治を変えられる人(政党)を選ぶ選挙」だと私は考える。争点はその一点。

氏は本書で、望むと望まざるとに関わらず、アメリカ追従を止めれば日本独自路線を模索するチャンスが生まれると述べているが、今の政治体制だとアメリカが居なくなってもおそらくほぼ何も変わらない。今の内閣は「行政府」として全く機能していない。

世界が動いてる中で、日本はどう振る舞うか?
ほんとに早く何とかしないと、手遅れになりかねない。
そんな危機感も、本書を読んで改めて感じた。

以下は目次。

オバマ政権と今後の米国
米英金融革命の終わり
深化するドルの危機
石油高騰の謎
大統領選挙とイスラエル
イラン革命を起こした米国
イラクで疲弊する米軍
テロ戦争の意図と現実
ロッカビー事件・はめられたリビア
エネルギー覇権を広げるロシア
米国に乗せられたグルジアの惨敗
フランスの変身
チベット支援騒動の深層
米国が中国を覇権国に仕立てる
国父の深謀
自衛隊機派遣中止で読み解く日中関係
ヤルタ体制の復活

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