ネットを使ったビジネスの今後

さて、ちょっと重たいテーマ。
「ネットを使ったビジネスの今後」
重たいというか、頭の体操的に考えてみたい。

というのも、podcastでよく聞いてる「TBSラジオ Life」で、6月のテーマが”日本のネットは進化したのか”というテーマだったので。聞いたのは1週間前なんだけど、自分の考えをちゃんとまとめておこうと思ったわけです。

ネットの今後。
これはマーケッターとして、しかもWebに比重が偏ったマーケッターとして、今後仕事をやっていきたいと考えてる自分にとってもほんとに重要なテーマ。

環境分析

さて、まずは「環境分析」。

社会(経済)」的な側面から見ると、2009年7月現在、ネットビジネスは隆盛を極め、関係者はもうウハウハで儲かりまくっている…なーんてのは大嘘で(笑)、ネットバブルも弾けて数年経ち、サブプライム弾けて世界同時不況というビックウェーブをモロに受け、さすがにもうネットはそれ程儲からないというコトが露見した。ネットサービスをやってる会社だけではなく、広告業界でも導線をがっちりと押さえ込んでいるGoogle/Yahoo以外の会社は全く儲かっていない。

一応断っておくが、本来ITの活用法は、「儲ける」という売上げUPの面以外に、「効率化する」というコストDownの面もあり、どちらでも「利益」は増やせる。しかし、とりあえず「ネットビジネス」の将来性を考えてみたいので、コストDownの面は考えないこととする。

Google/Yahooの場合は、この2社が「儲かる仕組み」を作ったから儲かっているわけで、大手マスメディア&代理店含め他社が儲かってないのは、単に適応能力スピードの違いで、この「儲かる仕組み」を作れなかったため。しかし、一度普及してしまうと、この大きな仕組みを今さら変えるのはほぼ不可能に近い。今後、ネットが生まれたときのような大きなスキームチェンジでも起こらない限りは。少なくともあと20年は起こらないだろう。。

日本の大手メディアや代理店は、「GoogleやYahooと組んでおこぼれ貰おう」という戦略に最近やっと方向転換して来た感じ。今後どこに落ち着くのやら。。

技術」的な側面で言うと、ここ数年新しい技術は出てきてない。「サービス」としては、日本ではSNSが当たり前のものとして定着し、その後「セカンドライフ」という中くらいの波を超え、最近は「Twitter」が徐々に普及し始めている(海外では既に定着してる)。TwitterはメッセとSNSの中間に位置してると言われているツール。最近私はやっとTwitterの活用法がわかってきて使うようになってきたが、この位置付けは当たっていると実感している。

政治(法律)」面に関しては、まぁ特に言うことは無い。ルールを変えるような制度が作られるという話も聞かないし。

ビジネス化できたサービス

さて、そんな環境で、ビジネス、つまりお金儲けは出来るのか?という問い。

BtoBまで広げると話が大きくなりすぎるので、とりあえずBtoCに焦点絞って考えてみたい。

自分は長いことモバイルのサイトに携わってきた。前の会社で。それもかなり大手のCP。
3キャリアでサイト&アプリも作り、ついでに海外向けサイトも作り、一時期は目を閉じて携帯電話触ってもその機種名当てられるくらい(3キャリアとも)、ドップリとモバイルの世界にはまっていた。

で、そんなモバイルのネットサービスは、実は一時期儲かっていた。特定のジャンルのみ。それは「着メロ」だ。これは純粋にビジネスモデルと版権等の法律面で有利だったため。

ビジネスモデルは固定課金。マイメニュー登録して月々固定で100円なり300円なりのお金をユーザから支払ってもらう。当然登録したユーザ全員がヘビーユーザなわけがなく、ほとんどの人は使ってないけどお金だけ支払うことになる。いちいち解約するのも面倒くさいという理由で。このビジネスモデルがほんと秀逸。

そして、版権。実は着メロは音楽著作権はJASRAC等通して支払うのだが、他はキャリアに1割ほどお金払うくらいで、7~8割はCPにお金が残る。だからこそ儲かるのである。現在「ニコニコ動画」やってるdwangoも、元は着メロのCP会社だし、Music.jpなども同じ。みんな「着メロ」で儲けたお金で大きくなった会社なわけだ。

しかし、現在の着うたは、上記の他に音楽レーベルに版権料を支払う必要がある。これがバカみたいに高い。5~7割くらい支払う必要がある。そうなると1~2割くらいしかCPに残らない。しかも着うたなのでデータサイズはさらに大きくなり、通信費&ストレージ維持費は着メロよりもっと必要。(手数料引いた)収入は少ないわ、コストはかかるわで、現在モバイルのコンテンツビジネスは完全に停滞している。

その後流行った「モバゲー」「mixi」などのSNSサイトは広告モデル(最近は「GREE」がよくCMやってるな)。「モバゲー」は一応アバターの服とかのコンテンツも売っているが、コンテンツ収益だけで黒字化するとは到底思えない。それに「モバゲー」やってるDeNAはアフィリエイト代理サービスもやってるし。
しかし、この広告モデル、ラジオでも話していたが、現在のmixi広告はアダルト漫画などの怪しい広告が多い。mixiは現在1500万人ほど会員がいる。それだけ大規模で、それなりの知名度があるサービスですらそういう状況。

その後、多少儲けられたのは「デコメ」サイトくらいか。。

よって、モバイルサービスは月額/従量では完全にCPが儲からない形へ体制が変わってしまった(余談だが、ゲームジャンルだけは、既存のコンテンツの焼き直しでコストかからないという要因もあって、大きな波は無いが継続して安定収入は得てる)。

「エンタメ」以外でネットで儲けた事業ジャンルは2つだけ。
「金融」と「EC」。
「金融」はネットを使った投資の手数料ビジネス、あとはネットバンク。それと「EC」は「Amazon」「楽天」「Yahooオークション」に代表される、商品購入時の手数料ビジネス。

その他は…儲けているジャンルは思い浮かばない。

ユーザへのリーチ

ネット広告モデルは儲からない。何故儲からないかと言うと、ユーザにリーチ出来ないからだ。もっと言うと、一番お金持ってる50代~60代の層にリーチができない。だってこの年代層はパソコンもモバイルも使わないから。理由はすごく簡単。

つまり、現在パソコン&モバイルをメインで使ってる我々が爺さんになる30年後であれば、パソコンなりモバイル使ってかなりの層にリーチできるだろうが、それまではネット広告だけではカバーできない層、しかもマジョリティの層が存在することになる。よって、その層にリーチさせるには、リアルメディアとクロスさせたメディア戦略が必要。それがクロスメディア。

クロスメディアの一例として、最近流行ってるのが「デジタル・サイネージ」。
これは「電子広告」のこと。単に広告をデジタル化したのではなく、ネットワークに繋がったディスプレイ(パソコン)を店頭に置く。オンライン化されているのが重要。ネットではログを使って逐一ユーザの行動履歴を取ることが出来るが、それをリアル世界でもやってしまおうという試みも既に行われている。
ラジオで紹介されていたが、アメリカでは店内のカメラ映像から性別・年代を特定して、マッチした広告を表示させるというところまで実現されているみたい。

お家でパソコン使ってるときはネット広告、テレビ見てればCM、外出してお店に入ればデジタル・サイネージ、街中歩いてるときは非電子看板やスクリーン広告、電車に乗れば電車内広告、携帯見てるときはモバイルネット広告、街中や店頭でちらし配ったり、DMやメールを配布しても良いわけだし。。
24時間という一日の時間の中で、いかに多くの時間(回数)接点を設けられるか、リーチ出来るかどうか…それがクロスメディアの本質。

そして、それには戦略が必要。
それがマーケティング戦略。
方向性が何か無いと、「どこに」「何を」「いつ」載せるのかが決まらない。
それから「どうやって」を考える。
それを考えるのが企業のマーケティング担当者の役割であり、サポートするのが広告代理店の役割なんだろう、本来は。今は選択肢の1つに過ぎないマス・メディアと強く結びついてるイメージのある代理店。本来の役割に戻る事が出来るか否か?
今後、代理店の生きる道はそこにしか無いような気がする。まぁ人事なのだが。。

課金モデルは?

ここで、ネットでビジネス行うに辺り、考えられる課金モデルがどれくらいあるか考えてみたい。

とりあえず、考えられるだけざっと挙げてみる。
・月額(固定)
・従量(コンテンツ課金)
・広告掲載
・コンサル
・ソフトウェア販売
・ソフトウェアレンタル(ASPなど)
・コンテンツ制作
・商品販売
・商品販売手数料
・金融商品利用料
・投資差益
・投資モデル
⇒まだ事業にすらなっていない。
ベンチャーキャピタルなどから資金援助もらい運営してるモデル。

もう数段階ブレイクダウンは出来るだが、細か過ぎるとわかりづらいのでここまでにしておく。

しかし意外に少ないな。これだけか。。
これはネットサービスのモデル以外に、メディア業界のモデルも含めている。メディア業界は驚くほどモデルが少ない。「広告掲載料」と新聞など「商品販売」の収益のみ。まぁ、球団経営とか別事業もやってるがこれは本業では無いので。。それと広告代理店は「コンサル料」のみ。

GoogleやYahooなどは「広告掲載料」で新しいモデルを作った。
Googleは9割の収入をこのモデルから得ている。

このモデルからさらに落とし込んで、Googleのように新しいフロンティアにモデルを作ったプレイヤーが、そのエリアを総取りできる。インターネットが生まれたコトにより、今まで存在しなかったフロンティアが生まれ、このモデルを適用できる枠が広がった。それがネットバブルの本質。

ネットビジネスで「大きく」儲けるには、このモデルの中からさらに1~2段落とし込んで、誰も足を踏み入れていない新雪のようなエリアを見つけ、そこにカマクラを作ったり雪だるまを作ったりして、人を呼び込めばよいというわけだ。

ビジネスの規模

ただし、上記でも書いたが、これは「大きく」儲ける場合のみ。

ビジネスには規模がある。
単純に「大/中/小」の3段階で考えてみると、「大きく」儲けるにはフロンティアを開拓する必要がある。これが既存のマス・メディアや代理店がやろうとしていること。
(大/中/小の定義は厳密には出来ないが、とりあえず小:売上1億未満、中:売上100億未満、大:売上100億以上とする)

しかし、ネットというのは実は「大きく」儲けられるフロンティアでは無いと私は考える。
ネット革命の本質は、「中くらい」&「小さく」儲けるビジネスのエリアが格段に広まったことにあるのでは無いだろうか?

もっと言えば、企業にとっては、最初に論じないと言った「コストDown」の面にこそ本質があり、「売上げUP」の面でネットが貢献できることは実はかなり少ないのかもしれない。

Web1.0で既存メディアが新たにネットというメディアを使って情報発信を始め、Web2.0で個人が積極的に情報発信を行うようになった。次のWeb3.0はまだ輪郭すら見えないが、個人が情報発信できるようになったおかげで、個人が「小さく」設けるビジネスエリアはかなり広がっている。具体的には、「広告掲載(アフィリエイト)料」「ネット投資」「商品販売手数料(転売)」「従量(コンテンツ:例えばiPhoneアプリとか)課金」などなど。

個人サイトが小規模ながらメディア化したおかげで、大手マス・メディアは、個々の小規模メディアを統合してマス(集合)の規模まで広げることが出来なくなってしまった。その結果が、現在のマス・メディアの凋落に繋がっている。

しかし、マス・メディアや代理店は自らの人件費の高さという事業モデルのために、「大規模ビジネスが出来ない=ネットは儲けられない」と考えがちなので、発信力を持っている彼らが「ネットは儲からない」という説を流通させることになる。これは正確には「自分の事業モデルでは儲けられない」ということで、中小規模なビジネスであればネットの活用法はいくらでもある。

ネットビジネスを考えるには、そこに焦点絞って考えるべきだ。

ネットの将来性

人同士、モノ、イベント、情報、集合知…そういった色んなモノへの「接点」は、ネットのおかげで格段に多くなった。それをビジネス化してる会社もそれなりにある。ただ、何と言うか「方向性」が定まっていない感じがする。1つにまとまっていない。つまり、1ジャンル/1シーンを作れていない。

しかし、中小規模に焦点を当てると、活用法に限界が見えたというわけではない。
そこにネットビジネスの明るい未来を、自分としては感じる事が出来た。

まだ自分自身考えがまとめきれていないし、新しいモデルもまだはっきりとは意識できないが、まだまだフロンティアがあると自覚出来ただけでも良しとする。

また別の機会にもっと深堀して考えてみたいと思う。

今のところ「ネットを使ったビジネスの今後」にコメントは無し

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