世界一シンプルな経済入門 経済は損得で理解しろ!

飯田泰之さんの著書。

飯田さんの本は、前回「日本経済復活の一番かんたんな方法」に続き2つ連続。今回は単著。

経済の初心者をターゲットにしてて、誰でも読めるような簡易な文章で「経済学」を説明するよう考えられた本。「経済学」だけでなく、政府の「景気対策」についても扱っている。

まずは、ちょっと長いが、以下の目次を見てほしい。

第1章 経済学って何ですか?
1-1 経済学の出発点

1-2 費用と便益
1-3 交換でみんな幸せ
1-4 経済学の原則で見る政府の役割
第2章 競争ってすばらしい?
2-1 競争ってすばらしい!
2-2 需給分析でここまで分かる
2-3 企業は競争を避けなければならない
第3章 景気って何ですか?
3-1 ミクロ経済学とマクロ経済学
3-2 「日本の景気」って何ですか?
3-3 不況には2種類の型がある
第4章 経済政策って何ですか?
4-1 成長政策
4-2 安定化政策
4-3 再分配政策
第5章 個人はどう生活さればいいですか?
5-1 心にいつもバランスシートを
5-2 負債が多くても悪いとは限らない
5-3 資産価格
5-4 資産運用
5-5 自分だけの資産の蓄積
第6章 日本経済ってどうなんですか?
6-1 日本経済の本質的問題は?
6-2 そして日本経済は?
6-3 デフレが問題となる3つの経路
6-4 デフレ下の合理的行動
6-5 日本経済に突きつけられた問題
第7章 政策、ニュースの正しい見方
7-1 銀行って何をするところなの?
7-2 日本銀行って何をしてるところ?
7-3 日本の底力
7-4 正しい新聞の読み方、ニュースの見方

第1章では経済学について簡単に説明してる。
要点は3つ。

  • 希少性
  • インセンティブ
  • ノーフリーランチの法則

希少性はそのままの意味、インセンティブは本のタイトル通り損得(「費用」と「便益」)、ノーフリーランチは、人々がインセンティブに基づいて行動をするとフリーランチは無くなるという例え。これが経済学の出発点とのこと。で、その帰結として、「トレードオフ(交換条件)」が必ず発生する。トレードオフとは、便益(満足)を得るには必ずコスト(費用)が発生するということ。

結構わかりやすい。

けど、一番忘れちゃいけないことは、これが「経済学の原則」である以上、この前提から外れる場合は「経済学」の考え方は使えないってこと。人はインセンティブだけを考えて行動してるわけじゃないので。「経済学」が無意味という意味じゃない。限定された条件でしか使えないってことはちゃんと理解しておく必要がある。

で、2章は競争について。
抑えておくべきは、競争回避のための以下3つの戦略だけかな?

  • 政府による規制
  • コスト優位戦略
  • 差別化戦略

3章では、不況は「実力不足(潜在GDPの低下)型不況=スタグフレーション」と「ギャップ型不況=デフレ下不況」の2種類があるってことを抑えておけば良い。

4章はかなり肝。一番この本で重要かもしれない。
目次にもあるが、経済政策のパターンをわかりやすく明示してくれてる。
それが以下の3つ。

  • 成長政策
  • 安定化政策
  • 再分配政策

この区分けはほんとに分かりやすい。飯田さんの考え方の中心と言ってもいいかしら?

成長政策は文字通り「GDPのパイ」自体を大きくすること。安定化政策は潜在GDP(実力)通りの力を発揮させること。再分配政策は言葉通り。

また、政府の経済政策は「財政政策」と「金融政策」があるが、財政政策は「政府支出(公共事業など)」と「給付金、減税」の2種類、金融政策は日銀によるマネー量(物価)のコントロール、という手法となる(日銀は名目としては独立機関なんだけど、実質は政府機関だから政府主導の政策になるってわけ)。

で、6章で日本経済の現状を分析する。
現在の経済状況の悪化の原因は、一言で言えば「デフレのため」というのが著者の主張。つまり、改善方法は当然「デフレからの脱却」になる。

これも結論としてはわかりやすい。
しかし、物価が下がっている今の状況では、どうすれば「(お金を持った)消費者がお金を使ってくれるか?」というのが一番大きな課題。

再分配政策はたしかに重要。けど、お金持ってるからって強制的に徴収するわけにもいかない。いかに気持ちよくお金を使わせ、若者にそのお金を回すか、その手法は特に語られていない。

「消費者にいかに購入してもらうか」はあくまで企業が考えること。経済学者が考えることじゃない。しかし、ただ「購入してもらうこと」だけを考えていると、グローバル化したこの世界だと、果てしないダンピング(値下げ)競争になってしまう。ミクロでは良い結果でも、日本経済というマクロでは悪い結果となる。さて、どうすればいい???

経済学の基礎的な考え方や、政策の3つの柱など、大変わかりやすかったんだけど、この先どうすればいいか具体的な方法を知るには、あまり役に立つことは書かれてなかった。
その辺り残念。。。(「経済学」だけにそこまで期待しても仕方ないしね。。)

しかし、全体的にわかりやすくて読みやすい良著でした。

今のところ「世界一シンプルな経済入門 経済は損得で理解しろ!」にコメントは無し

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