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子どもの貧困―日本の不公平を考える (岩波新書)
子どもの貧困―日本の不公平を考える (岩波新書)

阿部彩さんの著作。

「子どもの貧困」について論じた本。

よくよく考えてみると、「子どもの貧困」というのはあまり聞き慣れない言葉だ。
「少子化」についてはよく聞く。特に最近。晩婚化が進み、結婚しても子どもを生まない夫婦も増えてると聞く。そして、民主党政権が少子化対策として「子ども手当」を支給する話が現実味を帯びてきている現在、やたらと「少子化」という言葉を耳にするようになった。

しかし、「貧困」問題はまったく別。
この本は「子ども」のみを扱っているが、ニートやフリーター問題にも通低している。「貧乏」とは性質が異なる。「貧困」とは、生きていく上で最低限の生活すら出来ない状況だ。ついでに、「格差」とも全く違う。「格差」問題は、所詮スタートライン(機会)の「差」をどれだけ無くすかという話でしかない。

なお、「貧困」は、憲法25条で定めている以下の条文にも反する。

すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。

「貧困」という言葉を聞き慣れない理由は簡単だ。
この本でも論じられているが、日本では一億総中流化を実現し、長い間社会的に「貧困」は無かったからだ。高度成長期以降は、政府も「貧困」問題を扱ったことがない。よって、「貧困」を扱ったまともな数字も無く、改善しようにも基準となる「指標」すらないようだ。

まず、「貧困」が存在する、という事実を認める必要がある。
そのための手助けとなる良著、というのがこの本を読み終わった直後の感想。

さて、以下は目次。

第1章 貧困世帯に育つということ
第2章 子どもの貧困を測る
第3章 だれのための政策か―政府の対策を検証する
第4章 追いつめられる母子世帯の子ども
第5章 学歴社会と子どもの貧困
第6章 子どもにとっての「必需品」を考える
第7章 「子ども対策」に向けて

第1章で、「貧困」が親の世代(世帯)から引き継がれてしまうという現状を説明し、第2章で、貧困を測る方法を解説してくれている。日本には測る基準が無いが、どうやら世界には「相対的貧困」という概念があるようだ。

これは、手取りの世帯所得(収入-(税+社会保険料)+(年金+社会保障給付))を世帯人数で調整し、その中央値(Not 平均値)の50%(EUでは60%)を貧困基準とする方法とのこと。
この基準で計算すると、相対的貧困線(生活レベルの最低ライン)は一人世帯で127万円、二人世帯で180万円、四人世帯で254万円。生活保護基準とも概ね重なるようだ。

また、この相対的貧困を子ども(未成年)に絞って比率(貧困率)を算出してみると、「15%」ほど。他の先進諸国と比較して、日本の子どもの貧困率は結構高いようだ。
世帯タイプと貧困率を比較すると、「母子世帯」にかなり顕著な数字が見て取れる。「母子世帯」の貧困率は、他の世帯が10~30%であるのと比較して、「66%」と圧倒的に高い。

さらに、「2人親世帯の就業人数」と「貧困率」をOECD各国で比較した表を見ると、何と、「2人就業(両親共働き)」と「1人就業」の貧困率の違いが、日本ではほとんど見られない。他国では「2人就業」の場合かなり貧困率が下がるのに比べて(・・・1世帯で2人働いてるんだから、下がるのが当たり前だと思うが。。)。

つまり、日本では「母親(女性)の仕事の収入が他国に比べて低い」 、そしてその結果として、「母子世帯の子どもが貧困になりやすい」状態だということだ。

しかし、数字を知ることで、理解が格段にしやすくなるな。それがこの本の素晴らしさ。徹底的に数字で説明してくれる。
ただし、理解が深まった結果、今まで考えていた以上に状況は深刻ってこともわかった。。日本は「どんな環境でも努力次第でどうにでもなる」と、今まで漠然と考えて(過ぎて)た気がする。。どうやら楽観的すぎたようだ。。

第3章では、日本政府の貧困に対する政策について解説している。想像通り、たいした保証が無いのが現状。「子ども」への社会保障費用(児童手当や児童扶養手当など)も、教育にかける費用も少ない。情けない状況だ。。

第7章で、今後この状況を改善するために取るべき施策を提案されている。しかし、何より最初に始めるべきことは、第6章最後から引用した以下の言葉に集約されている。

自らが属する社会の「最低限の生活」を低くしか設定せず、向上させようと意識しないことは、次から次へと連鎖する「下方に向けてのスパイラル」を促し、後々には、社会全体の生活レベルを下げることとなる。私たちは、まず、この貧弱な貧困観を改善させることから始めなければならない。

まずは意識の改善から。。
そのための第1歩として、本書は最適である。

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