次のグローバルバブルが始まった!

山崎養世さんの著書。

氏は元ゴールドマン・サックス投信の社長。その経験から、今後の世界経済がどのような変化をしていくかを大胆に予想したのが本書だ。

氏の本は以前何度か読んで、このブログでも数冊書評を書いたが、非常に明確な論理でわかりやすく、首尾一貫している態度が好感が持てる方。私は氏のちょっとしたファンみたいなもので、この本も新作が出たと知ってすぐに本屋で購入した次第。

さて、目次は以下の通り。

第1章 サブプライム危機は終わった!
第2章 新しいグローバル・バブルが生まれる
第3章 経済超大国となった中国が世界経済を一変させた
第4章 「復活大国」の経済成長は止まらない!
第5章 グローバル・バブルが破裂するとき
第6章 世界経済の狂乱に日本は耐えられるか?

昨今アメリカで発生し、全世界の経済に打撃を与えたサブプライムローン問題だが、当初言われていたような壊滅的な危機は発生しておらず、今後も発生しそうにないコトを、1900年代初頭の世界恐慌やオイルショック、不動産バブルなどと比較しながら、現在の経済システムは相当足腰が強くなっており、一本の大きな柱が抜けたところで、他が上手くバランスを取って崩れない設計になっていることを解説している。

この本を読んだ後で、アメリカ大手証券会社のリーマンブラザーズが倒産したり、アメリカ大手保険会社AIGがFRBへの支援要請を行うなど、アメリカの金融界はかなりガタガタな状況だが、たしかに他国は今のところそれほど酷い状態ではないかな??とも思える。

氏は、アメリカの不況が次のバブルの入り口になると予想している。

その入り口とは「ドル・キャリー取引」。

マイナスとも言ってよい超低金利の日本円を借りて、よりリターンの大きな投資を行う「円キャリー取引」が最近まで行われていたが、要するにこれのドル版。
アメリカは2〜3年はサブプライム問題が引き起こした不況が続くだろうし、その間は金利を高くすることは出来ないので、ドルキャリーを行うインセンティブが、各国の投資家に生まれる。

そして、その投資先は、当然BRICs諸国(ブラジル/ロシア/インド/中国)。

この本で知ったのだが、中国は既に「外資優遇」から「国内重視」へ舵を切ったらしい。
世界の工場として外国企業の下請けを行ってきた中国だが、外資も溜まり、国内労働者に経験値も溜まってきて、いよいよナショナルブランドを作れるほどの体力が付いてきたのだろう(…その過程で、世界の工場は他のアジア諸国や南米、アフリカとかに移るんだろうな。。)。。今まで外資企業を優遇して誘致してきたが、徐々に国内企業を育てる方向にシフトしていくことになる。ということは、今後中国の物価は徐々に上がり、元安から元高へ移行していくと予想され、ますます投資熱が高まる。

ただ、本のタイトルにもある通り、これは所詮バブルなので、いずれは弾ける。

氏はこれを3年〜5年と予想しており、2012年頃には黄信号が灯ると警告している。
ゆるやかなインフレが続けば、今は低い(ドル)金利も同様に上昇し、ある臨界点を超えたとき、バブルが弾け連鎖的に色んな箇所に負債が溜まっていく。。非常に大雑把に要約をしてしまったが、こういった筋道で氏はバブルが弾ける予想をしている。

そして、中国やインドなど人口が多い国が経済発展することで、資源/食料不足が確実に発生し、資源も無く食料自給率も40%ほどしかない日本は確実に危機に陥ることを氏は心配している。

このままで本当に日本は大丈夫なのか?と。。

資源/食料不足については、今後の技術革新に氏は期待をされているようだが、正直それで対応できるのかな?楽観的すぎやしないか?と多少疑問は残る。。

経済的な処方箋としては、「金融センターになる」というのが一番解りやすい回答かなーと思う。まぁ、資源が無ければ知恵で勝負というわけだ。日本と同様資源が無く島国であるイギリス(ついでに日本と比較してたいした産業も無いので条件はもっと悪いはず)が、先進国として今の地位に居られるのも、ロンドンが「金融センター」になっていて、世界中からお金が集まりその手数料で稼いでいるからだろう(もちろん、その人材が育っているのが一番の強みだが)。ただし、他のアジア諸国でも次の「金融センター」は自国でという想いは当然あって、バーレーンやシンガポールなどライバルは多いわけだが、その中でも日本の動きは(相当)鈍い。海外企業が次々と魅力の無い日本市場から撤退している始末だし。。

いずれにせよ、氏の言う通りに今後の経済/金融が流れて行くのかどうかはわからないが、今後世界が大きく変わっていくのは間違いない。そして、現時点では、日本の置かれてる状況はけっして良くない。

そのためには今何をすれば良いか?

そういったちょっと先のことを想像して今から備えるためにも、この本は将来の1つの可能性として、読むべき価値があると思う。

今のところ「次のグローバルバブルが始まった!」にコメントは無し

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